毎年3月9日は語呂合わせから「ザクの日」として、関連ゲームなどでイベントが行われてきた。『機動戦士ガンダム』でジオン公国軍の量産型MSとして登場した「ザク」。主人公側からすると相手陣営のMSではあるものの、各作品での活躍や見た目のかっこよさから多くの人に愛されてきた機体のひとつだ。
名もなきパイロットが乗る量産機だけでなく、シャア専用ザクをはじめとする指揮官専用機、そして『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場するド派手カラーの「ホビー・ハイザック」や『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場する「アプサラス」など、非常にバリエーション豊かな機体でもある「ザク」。
ゲームやコミック、そして番外企画「MSV」などでは数えきれないほどの派生「ザク」が登場しているが、中には「これもザクなの?」というような、パッと見ではザクとは気づかないような機体も描かれてきた。
■「イリア・パゾム専用ザクIV」正統進化でもこれだけ別物に
まずは福井晴敏氏がストーリーを担当する漫画『機動戦士MOONガンダム』から、正確には「イリア・パゾム専用指揮官用ザクIV プリンセス装備」となる「イリア・パゾム専用ザクIV」。ザクには見えない機体たちの中でも、正統派の進化を遂げたのがこの「イリア・パゾム専用ザクIV」と言えるだろう。
真っ黒な全身に赤く塗られた左腕部が目をひく、ツノが生えたイリア・パゾム大尉の搭乗機。汎用性や拡張性、生産性が重視された正統派の「ザク」シリーズの最終進化系は「ザクIII」という意見が多い。同期の「ドーベン・ウルフ」とかち合ってしまったため、生産は少数となってしまったものの、多彩なオプションと、多彩なバリエーション機が存在することが確認されている。
その「ザクIII」を改良したものが「ザクIV」で、それをさらにカスタム仕様にしたのが「イリア・パゾム専用ザクIV」だ。
「イリア・パゾム専用ザクIV」は、空間高機動用スカートユニットである「プリンセス」が装備されていて、カラーリングも黒と赤という専用仕様に塗装。「プリンセス」にはファンネルが搭載されているが、ファンネルを搭載したザクは、歴史上でわずかしかいない。重心が低い、甲殻類や虫を思わせる曲線が美しい機体で、辛うじてザクの面影を感じるのは頭部のみだろうか。
正統派の進化とはいえ、「ザクIII」や「ザクIV」の時点で高出力、重装甲化が進み、体格はかなりマッシヴになっている。だが、これは『機動戦士ガンダムZZ』時代のほとんどのモビルスーツに当てはまることで、むしろその世代の標準として、ザクらしい進化と考えることができる。
ファンネルなどのザクっぽくない武装も装備できるのも、ザクの汎用性の高さか。正統派ザクの中でのギリギリザクっぽい見た目を維持できる最終到達点と言えるだろう。