■読者の多くが騙されたヒロインの衝撃的な姿

 最後は、実は死亡していなかったものの、主人公や読者を絶望のふちにたたき込んだ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』のヒロイン死亡シーンを紹介したい。

 それは第3部「人誅編」コミックス24巻のこと。緋村剣心に因縁があり彼を憎んでいる雪代縁は、神谷薫をさらい「大切な人を救えなかった後悔」を剣心に味わわせるため、彼女にそっくりな人形を使ってその死を偽装した。

 ページを開くと見開きの形で、体中から血を流して目を見開いたままの薫が刀で胸をひと突きされ絶命している。その様子は、どう見ても本当に死んでいるとしか思えなかった。ほほに剣心のような十字傷を刻むあたりも、縁の恨みの強さを物語っているようだった。

 実際剣心はこの事件を機に廃人のようになってしまい、立ち直るまでにかなりの時間を要した。読者の心にも、このシーンがトラウマになっているという人は多いのではないだろうか。

 主人公や読者を元気づけるポジションのヒロインに訪れた唐突な死。その残虐さは、ときにトラウマとなり主人公と読者の心にいつまでものしかかる。そんな死にざまから立ち直る主人公たちの姿が今も目に焼き付いている。

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