■熱々が肝心、シンプルすぎる「目玉焼き丼」
ウスターソースをご飯にかける「ソーライス」に、炊き立てご飯にバターと醤油をかける「バター醤油まぶしご飯」など、時折ズボラレシピも登場する『美味しんぼ』。そして「のり巻き合戦」というエピソードで、目玉焼きの研究をしている快楽亭ブラックのために山岡が“新しい目玉焼きの食べ方”として披露したのが「目玉焼き丼」だった。
これはご飯の上に目玉焼きを乗せるという非常にシンプルな丼だが、それぞれが熱々なところがポイント。まず丼をあらかじめ湯で温めておき、炊き立てのご飯に、黄身が半熟状態の目玉焼きをフライパンから直接よそう。そして、黄身を潰してそこへ醤油をかけて食べるというものだ。
ズボラに見えるが、シンプルな工程の中に山岡のこだわりが詰まったレシピ。山岡いわく、黄身に熱が加わることで味が濃くなるそうで、スクランブルエッグのように混ぜたあとで焼く料理よりも、「焼いたあとで、白身に半熟の黄身をまぶして食べる方が、味の純度と鮮やかさが数段上」なのだとか。
飼料価格の高騰や鳥インフルエンザの感染拡大によって、卵の価格が高くなっているとはいえ、やはりいつまでも卵は庶民の味方。誰にでも簡単に作れそうで、読んだあとすぐに真似してみたくなる料理だった。
■少ない食材で作った「ローピン」
山岡たちがスキー旅行に出掛けたエピソード「非常食」で登場した「ローピン」も真似したくなる料理だ。
山岡たちは懇意にしている社長に招かれスキーに出かけるが、吹雪に見舞われ別荘に閉じ込められてしまう。そこで困ったのが食料。みんなが「飢え死にする」と不安を口にする中、山岡は小麦粉、ごま油、長ネギを見つけ、中国の家庭料理「ローピン」を作ろうと提案するのだった。
これは、まず小麦粉に水を入れてこねて一時間寝かせ、麺棒を使ってできるだけ薄く伸ばす。そこにごま油を引いて、塩を振り、細かく刻んだ長ネギを散らし、端からくるくると巻いていく。棒状にしたら今度はそれを渦巻き状に巻いて、フライパンサイズに伸ばして焼くというものだ。
実際に作ってみると、栗田さんたちの感想通り、表面はパリパリで中はしっとりモチモチとしていて、ごま油とネギの風味が食欲をそそる。先に紹介した「カツオマヨネーズ」「目玉焼き丼」に比べると格段に手間はかかるが、どこにでもある食材で美味しく作れる。時間のあるときに試してみてはいかがだろうか。
以上3つを紹介したが、その他にも「味噌汁の具は一種類」「りんごの皮を煮たアップルティー」「手間をかけたもやし料理」など、つい真似したくなる料理知識が多数描かれた『美味しんぼ』。現在公式YouTubeチャンネルでは過去に放送されたアニメの名作エピソードが配信されているので、そちらでも山岡たちのうんちくを味わってみたいところだ。