『風の谷のナウシカ』や『千と千尋の神隠し』、『魔女の宅急便』にも…スタジオジブリの名曲に隠された“語り継がれる驚きのトリビア”4選の画像
© 1984 Studio Ghibli・H

 世界中で愛されているスタジオジブリ作品は、作中の楽曲がフィーチャーされることも多い。そしてそれらの主題歌や劇中曲たちは、耳に残る名曲が揃い踏みだ。幅広い世代から人気があるスタジオジブリの名曲たち。今回はそんなジブリ作品の名曲に隠された、意外と知られていないトリビアをご紹介しよう。

■『風の谷のナウシカ』の劇中歌「ナウシカ・レクイエム(遠い日々)」は久石譲の娘・麻衣が歌っている

 1984年に公開された『風の谷のナウシカ』。本作の劇中歌「ナウシカ・レクイエム(遠い日々)」は、この曲を作曲した久石譲の娘で現在は歌手として活動している麻衣が歌唱している。

 彼女はこの曲を歌うことになったきっかけを、「ジェイソン・ウィンターズ・ティー」の公式サイトでのインタビューで語っている。

 当初この曲をボーイソプラノで録音することを考えていた久石は、“イメージを伝えるため”、と「家の中をウロチョロしていた私に歌わせてみた」のだという。するとそれを聞いた宮崎駿監督が気に入って、正式に麻衣が歌うことになったそうだ。

 録音当時4歳だったという彼女は、「暗いブースに一人で入れられ、少し怖くなって泣いた」というかわいらしいエピソードも明かしており、偶然歌ってみた麻衣の声に魅力を感じた宮崎監督のアイデアによって、名曲「ナウシカ・レクイエム(遠い日々)」は誕生していた。

 偶然だったとはいえ、幼い女の子の声で歌われているこの曲は、シーンの内容も相まって哀愁が漂う名曲だ。歌詞はなく「ラン」「ララ」という意味を成さない言葉のみで構成されているにもかかわらず、妙に心に刺さる魅力がある曲だと思う。

■『崖の上のポニョ』の大橋のぞみに「これ以上うまくならないでね」と言った宮崎監督

 2008年に公開された『崖の上のポニョ』の主題歌は、同一タイトルの「崖の上のポニョ」。この曲は音楽ユニット“藤岡藤巻”の藤巻直哉と、子役の大橋のぞみによって歌唱されている。

 2017年11月に刊行された『ジブリの教科書15 崖の上のポニョ』(文春ジブリ文庫)では、鈴木敏夫プロデューサーが主題歌についての裏話を紹介していた。

 当初から宮崎監督は『崖の上のポニョ』には、『となりのトトロ』の「さんぽ」のように語り継がれる主題歌が欲しいと考えていた。歌のイメージは、“お父さんと子どもがお風呂でいっしょに口ずさめる”というもの。

 ぴったりの曲ができあがり、鈴木は歌唱する人物について広告代理店・博報堂の社員で作品の製作にも携わっていた藤巻を抜擢。彼を父親役に、そして、子ども役に起用したのが本作のポニョ役でオーディションに来ていた子役・大橋のぞみだったのだ。

 歌のイメージに彼女がピッタリだと感じた鈴木は仮歌を録音。それを聴いた宮崎監督はすっかり気に入り、晴れて正式に採用されることになる。

 さらに鈴木は、2012年3月19日に放送された『人生が変わる1分間の深イイ話』で、大橋が抜擢された理由を明かしていた。

 大橋は現代には珍しい3世代家族で育ち、そんな“お年寄りと子どもが助け合う”という環境から生まれたのか、“屈託のない子どもらしさ”があったそうだ。そしてこの“子どもらしさ”こそ、宮崎監督が求めていたものだった。

 宮崎監督は大橋の“屈託のない子どもらしさ”がなくならないよう、彼女に「のぞみちゃん、これ以上うまくならないでね」なんて言葉をかけたという。

 大橋の歌が「うますぎなかった」ことが決め手となった「崖の上のポニョ」。たしかにいわれてみれば、彼女の歌声は実に子どもらしく、藤巻の歌声はまるで彼女を見守る父親のように感じられる気がする。

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