■仮面の下の素顔に賛否両論!?『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』外印

 1994年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で和月伸宏氏により連載された『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』は、その高い人気からアニメ化、実写映画化とメディア展開を続け、2023年にも再度アニメ化が決定している。

 中盤から暗躍を続けており、ついに終盤で姿を現した“仮面キャラ”こそ、自称“機巧芸術家(からくりあるていすと)”を名乗る男・外印だ。

 髑髏を模した仮面と、全身黒ずくめの“黒子”のような格好をしている彼は死体を加工した“人形”を鋼の糸で操って戦う人形師で、中盤に登場した夷腕坊も実は彼がなかに入って操る人形の一体だったことは、読者をおおいに驚かせた。

 どこか恐ろしい見た目に反し、一派のことを「外印と愉快な仲間たち」と呼んだり、鼻歌を歌いながら屍人形を作るなど、敵でありながらどこか掴めない人物でもある。

 そんな彼が戦う理由は“戦い”こそが技術を最先端のものに進化させる場であることから、あえて戦火を起こす側につき、その火種をより大きくする……という、なんとも身勝手なものだった。

 そんな彼の“仮面”の下は作中であらわになるのだが、この素顔が当時、読者の間で物議を醸した。仮面キャラということで、どこか美形な素顔を期待したファンは多かったようだが、なんとその素顔は剣心らよりも遥かに高齢な老人……。

 この驚愕の設定にファンから「なぜイケメンにしない」というクレームが殺到したそうだが、これに対し作者である和月氏は「美形なら顔を隠す必要もないだろう」と返すなど、まさかの論争が生まれてしまった。

 やはり読者は皆、仮面の下の素顔に期待を寄せてしまうようで、作中での活躍もさることながら、隠れた素顔についての議論の火種になってしまった、なんとも言えない“仮面キャラ”である。

 

 顔の傷を隠すため、素性を隠すため、年齢を隠すため……一口に“仮面”といっても、彼らがそれを付けることになった背景はさまざまだ。

 彼らが現在の姿になる理由に目を向けると、身に着けた“仮面”の無機質さも相まって、復讐心、責任感、享楽性といったものがどこか際立ち、より一層不気味に見えてくるのではないだろうか。

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