『北斗の拳』のジャギに『機動戦士ガンダムF91』のカロッゾも…意外な理由から主人公たちを苦しめた漫画・アニメの“面倒な仮面キャラ”3選の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳【究極版】』4巻(徳間書店)

 漫画やアニメに登場する“仮面キャラ”は、素性や表情を隠し行動するミステリアスな存在だ。なかには、なんとも独特でどこか独善的な理由から、主人公たちに敵として立ちはだかる者も存在する。そんななかでも独自の理由で“悪”の道に走った、ちょっと面倒な仮面キャラたちについて見ていこう。

■優れた“弟”への果てしない復讐心…『北斗の拳』ジャギ

 1983年から原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏により『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された『北斗の拳』では、核戦争後の荒廃した世界を舞台に、伝説の暗殺拳“北斗神拳”の伝承者・ケンシロウが、さまざまな強敵と激闘を繰り広げていく。

 作中では暴力で人々を支配しようとする極悪非道な輩が多数登場するが、なかでもとくに身勝手な理由から暴挙を繰り返したのは、本作を代表する“仮面キャラ”であるジャギだ。

 頭部を覆うヘルメットと刺々しいデザインのジャケット姿が特徴的な彼は、ケンシロウ同様に胸に七つの傷を持ち、横暴を働いては「おれの名をいってみろ」と問いかけ、わざと自身がケンシロウだと吹聴してまわっていた。

 その正体はケンシロウの義兄の一人であり、実は過去にケンシロウに敗北した腹いせから、世紀末の世界で悪事を働き、それをケンシロウのせいにする……という、嫌がらせのためだけに行動していた。

 そんな彼が仮面をかぶっているのも、ケンシロウに破れた際に秘孔を突かれたことで、頭部が崩壊寸前のグロテスクな姿になってしまったことが理由となっている。

 北斗神拳を学んではいるものの、その実力はケンシロウには遠く及ばず、勝つためならば含み針のような卑怯な手を使うことすらいとわない外道。ケンシロウと再び相まみえた際にもショットガンを堂々と使ったり、ガソリンに火をつけたりとやりたい放題であった。

 彼を代表する名セリフ「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねぇ!!」は、兄として弟に負けたことを許すことができないという凄まじい執念が伝わってくる。弟へのコンプレックスだけを頼りに暴挙を繰り返した、あまりにも独善的な仮面キャラだ。

■優秀ゆえに愛する人に拒絶された悲しき男…『機動戦士ガンダムF91』カロッゾ・ロナ

 1991年に劇場版アニメとして公開された『機動戦士ガンダムF91』は、『機動戦士ガンダム』の映画化10周年を記念して制作されたオリジナル作品だ。

 主人公であるシーブック・アノーの前に立ちはだかるのは、本作に登場する仮面キャラのカロッゾ・ロナである。

 クロスボーン・バンガードの軍事部門における指導者として活躍しており、2メートルを超えようかという長身と頭部全体を覆う仮面が特徴だ。組織内では、見た目そのものズバリ“鉄仮面”の二つ名で呼ばれている。

 もともとは軍部の人間ではなく、バイオ・コンピュータを研究する勤勉な科学者だったのだが、巨大複合企業「ブッホ・コンツェルン」の会長の娘であるナディア・ロナと出会い、彼女との交際を経てロナ家の人間となった。ナディアとともに幸福な日々を送っていたかに見えたが、この出会いが彼の人生を狂わせていく。

 根が真面目だったカロッゾはロナ家と交流を深めるなか、“政治”や“世間”についても学んでいくのだが、ロナ家の貴族主義を嫌うナディアは彼に幻滅し、やがて彼女はまだ幼い娘を連れて別の男と駆け落ちし、カロッゾのもとを離れてしまう。

 これに加え、カロッゾと交流の深かった義兄・ハウゼリーが暗殺され、カロッゾは“ロナ家に残された唯一の男”として、凄まじい重圧を背負わされてしまう。

 さまざまな不幸の連鎖から覚悟を決めたカロッゾは、かつて一度は却下された“ラフレシア・プロジェクト”にて自らを被検体にするという暴挙に出る。結果、一年をかけて己の肉体を強化改造し、彼は現在の“鉄仮面”へと変貌したのだ。

 彼に起こった悲劇はどれも外的要因によるものばかりで、たび重なる不幸の連鎖が今の“鉄仮面”を生んだといえるだろう。優秀な人間として成長したことが、結果として愛する人から拒絶される理由になってしまった、なんとも悲しい過去を持つ仮面キャラだ。

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