■ハートなどに代表されるサスペンダー一体型

 本作中では、肩パッドとそれを固定するための革紐が一体化したタイプもよく見かける。たとえばシンの部下であるハートがそうだ。基本は普通の革のサスペンダー、しかし肩部分は金属素材のようで、念入りにトゲトゲまでついている。

 このサスペンダー式には何タイプかあるようで、オーソドックスなI字型だけでなく、X字型になったものや、Y字にさらに横一本足したような形もある。共通点は、どれも上半身裸であることと、トゲトゲがついていること。また股間の防具とつながっているパターンも多い。

 いくら肩や股間を守ったところで、心臓やはらわたを攻撃されては意味がない。いったい彼らは何を守っているのか……と思うが、あえて急所を出して戦うことが彼らなりの矜持とも受け取れる。

■美しい装飾がほどこされたシンとラオウ

 権力者ほど肩パッドにこだわる余裕があるのだろう。原作でケンシロウと戦う直前のシンの肩パッドには、その下に着ている服の襟や袖と似た模様が刻まれている。

 おそらく、『北斗の拳』コミックス[究極版]第2巻の表紙で描かれた袖やマントの装飾のイメージではないかと思うが、もしそうであれば、本作では一番繊細で美しいデザインの肩パッドのように思える。

 また、ラオウのものには宝石か何かが埋め込まれている。媒体によって地の色が金だったり銀だったり、また宝石が赤だったり青だったりするが、世紀末覇者らしく趣向を凝らした作りであることに変わりはない。

■アメリカ色の強いアイン

 最後に「天帝編」で登場したアイン。彼は肩パッドのみならず、服やブーツにいたるまですべて星条旗をイメージしたデザインで統一している。アメリカが好きなのか……と思ったら、アインの容姿のモデルがリチャード・ギアだということを、作画の原哲夫氏が単行本のコメントで明かしていたようだ。

 たしかに当時のギアはアメリカ兵や海軍士官生の役を演じていたため、“ザ・アメリカ人”という印象が現在よりも強いかもしれない。

 そう考えるとアインの肩パッドはキャラクターの出自がこめられた柄であり、やはり『北斗の拳』の肩パッドは個性の象徴でもあるのかな、と思うのだ。

 

 ファッションアイテムとしての「肩パッド」も『マッドマックス2』も『北斗の拳』も、すべて80年代に生まれた。そして時代が一周し、再び肩パッドが流行を迎えるなか、『北斗の拳』も今年で連載開始40周年を迎える。なんだか妙に感慨深い。

 なお『マッドマックス2』には『北斗の拳』で見たことのあるようなカットやデザインが多数登場するので、時間に余裕のある人は見比べてみると面白いかと思う。

  1. 1
  2. 2
  3. 3