■リヴァイはなぜ調査兵団に入団したのか?

 本編では登場時に既に調査兵団に入団した状態だったリヴァイだが、そもそもなぜ入団することになったのか、その真実が丸ごと描かれているのが、女性向けコミック雑誌『ARIA』に2013年~2014年に掲載された『進撃の巨人 悔いなき選択』(全2巻)だ。これももともとはテレビアニメのBlu-ray&DVDの初回特典として付属したビジュアルノベルが原型となっている。エルヴィンが団長になる前、つまり原作の6年ほど前の設定である。

 ウォール・シーナの地下街のゴロツキだったリヴァイは、地下生活で仲間であるファーラン&イザベルと共に、盗んだ立体起動装置を巧みに使いこなし窃盗を繰り返していたが、ある日その腕前が、調査兵団の分隊長を務めるエルヴィンに知られることとなる。そして、エルヴィンはリヴァイに交渉を持ちかけ、お互いの利害関係が一致したことで、リヴァイはファーランたちと共に調査兵団に入団することになる。

 リヴァイの普段の言動の粗雑さや、エルヴィンに対する揺るぎない忠誠心、それらに対して納得のいく理由が、この『悔いなき選択』には詰まっている。リヴァイとエルヴィンそれぞれのファンはもちろん、『進撃の巨人』好きの人ならまず読んでおいて損はない熱いストーリーだと言えるだろう。

■リヴァイが冷酷に振る舞う理由とは?

 リヴァイといえば、クールを通り過ぎて時に冷酷ですらある振る舞いも特徴のひとつだが、その理由となるエピソードもまた、前述の『進撃の巨人 悔いなき選択』に描かれている。調査兵団に入団したリヴァイは、壁外調査へと向かうのだが、ある日一瞬の判断ミスで苦楽を共にし続けた仲間2人を失ってしまう。そのときのリヴァイのむき出しになった感情、衝動、狂気――それらのすべてが読む者の胸を打つものであるのと同時に、「アッカーマン家」の血筋として覚醒した重要な瞬間としても描かれている。

 取り乱すリヴァイに対し、冷酷なまでに現実と向き合うように諭すエルヴィン。呆然としながらも、この時リヴァイはエルヴィンが持つ調査兵団への覚悟を痛いほど感じ、どこまでも付いていくと心に誓うのだ。本編で最終的にいつもエルヴィンの判断を尊重するリヴァイの、彼に対する忠誠心の源が描かれている、非常に胸が熱くなるシーンの一つだ。

 大切な仲間を失うという現実の残酷さを味わったことが、本編で兵士長として苛烈なほどに周囲に対して冷酷であるリヴァイの根底にあるということが理解でき、「同じような悔いを二度と味わわせたくない」という、誰よりも仲間想いなリヴァイの本当の心が見えてきて、目頭が熱くなってしまう。

『進撃の巨人』には、小説・コミカライズ含めまだまだたくさんのサイドストーリーが存在する。どの作品も、本編の世界観や設定、キャラクターの過去や背景などを補完しながら、より深く『進撃の巨人』の世界を知ることができるものとなっている。

 このようなサイドストーリーを通して、『進撃の巨人』に登場するキャラクターの過去や背景を知った上で、あらためて本編に立ち返って読み直すことで、よりこの作品の特別さ、奥深さを感じることができるはずだ。テレビアニメ完結編放送を控えた今こそ、『進撃の巨人』の様々なサイドストーリーを履修してみることをおすすめしたい。

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