1990年代の『週刊少年ジャンプ』(集英社)を盛り立てた、バスケットボール漫画の代名詞ともいえる井上雄彦氏の『SLAM DUNK(スラムダンク)』。湘北高校バスケットボール部を舞台に主人公の不良少年・桜木花道の成長やチームの快進撃を描いた本作には、主要キャラはもちろんのこと、魅力溢れる脇役たちが数多く登場する。今回はそんな脇役たちの中でも『SLAM DUNK』に欠かせない渋い脇役たちを紹介していこう。
■スラダン1渋い男…!? チエコスポーツのヒゲ店長
最初に紹介したいのがスポーツ店「チエコスポーツ」の店長、通称「ヒゲ店長」だ。
湘北バスケ部入部後、体育館シューズを履き潰してしまった桜木は、バッシュ(バスケットシューズ)を求めて赤木晴子とチエコスポーツへ向かい、ヒゲ店長と出会う。
思い人である晴子とデートのような雰囲気を満喫していた桜木。ヒゲ店長に「あーーんなかわいい彼女つれちゃって」なんていじられつつ、初めてのバッシュの履き心地にテンションが上がり、店内で走る跳ぶの大暴れ……。
しまいにはヒゲ店長が履いていたエア・ジョーダンVIに目をつけ、「中古だからマケてくれ」と、ポケットの30円で強引に手に入れるのであった。よくあるギャグ回のここだけの登場かと思いきや、その後も憎い演出でヒゲ店長は再登場する。
実は彼は、神奈川県の箕輪高校のバスケ部OBだった。選手としてインターハイ予選決勝まで勝ち進むも、強豪・海南大附属高校に敗れ全国大会への夢を果たせず引退……という過去を持っていた。
それ以降、ヒゲ店長は毎年インターハイ予選の決勝リーグの試合を観戦していたというが、作中での2年前、決勝リーグで対戦していた翔陽・藤真健司と海南・牧紳一を見ながら“これから神奈川は2人の時代になる”と隣の席にいた学生に説明する。すると、その学生から両頬をつねられ、「オレの顔をよく覚えとけよ 1年か2年後…必ず あいつらを倒しに上がってくる!!」と宣言されるのだ。
その学生こそが、のちに湘北主将になる赤木剛憲だった。赤木はその言葉通り、実際に翔陽を破り、あと一歩のところまで海南を追い込み、結果、見事インターハイへの切符を手にした。
インターハイ前、桜木はバッシュを新調しようと晴子とともにチエコスポーツに再度来店。そして、今年も決勝リーグを観戦していたヒゲ店長と会う。
ヒゲ店長は決勝リーグで活躍した桜木の名前をしっかり覚えていたうえ、赤木に対しての過去の非礼を詫び、コレクターには決して売ることのなかった湘北カラーでもある赤と黒のエア・ジョーダンⅠを桜木に受け渡した。
同じように海南を苦しめた自身の高校時代と湘北を重ね、インターハイの餞別として花道へバッシュを贈った懐の深さ……『SLAM DUNK』で一番渋い男と言ってもいいのだろうか。