1983年に『週刊少年ジャンプ』での連載が開始され、今年で40周年を迎える日本を代表するバトル漫画の『北斗の拳』(原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏)。その連載期間は1988年までの約5年間と、今にして思えば意外と短いが、連載中に2度にわたってアニメ化されたこともあり大ブームを巻き起こした。その後もゲームやパチンコ・パチスロ機などのメディアミックス展開によって、長きにわたり多くのファンを獲得してきた同作。最近も、Nintendo Swith用ゲームソフト『Fit Boxing 北斗の拳 ~お前はもう痩せている~』が発売され好評を博すなど、その人気は衰えることを知らない。
そんな『北斗の拳』だが、原作漫画の中にはそれまでのストーリーからは想像もつかない、まるで後づけのようにも思えるとんでもない設定があったのを覚えているだろうか。それがある種のグルーブ感を生んでいたのもまた事実だが、あらためて読み返してみても「ええ?そうだったの!?」と驚いてしまうポイントがいくつもあった。
そこで今回は、特に読者が驚かされたキャラ設定を、そのエピソードを交えて紹介していきたい。
■ユリアが南斗六聖拳最後の将だった!
ユリアはケンシロウの婚約者として初登場するが、ケンシロウの恋敵であるシンによって連れ去られてしまう。ユリアはシンの居城で過ごすもシンに心が動くことはなく、あろうことか自らの命を絶とうと身を投げてしまう。
その後ケンシロウが駆けつけてシンを倒すと、シンはユリアが飛び降りたことを告げる。ユリアは死んでしまった……ケンシロウはもちろん読者の誰もがそう思ったに違いない。ところが、ユリアは生きていたのだ。
実はユリアの正体は「慈母星」の宿命を持つ南斗六聖拳最後の将で、南斗五車星が命を賭けて守るべき存在でもあった。そのため、ユリアは陰で見守っていた南斗五車星のフドウやリハクによって、身投げをした場面で助けられていたのだ。
南斗六聖拳はシンを始め、シュウやレイ、ユダ、サウザーと、屈強な猛者ばかりである。そんな中にユリアが名を連ねるなど、誰も予想できなかったはず。シンはその事実を知りつつも敢えて黙ってケンシロウと戦うことになったが、その戦いを振り返ってみても、当初はそんな素振りは一切感じられない。シンはユリアの死を本気で悲しんでいるように振る舞っており、あれが芝居だったとしたらかなりの名演技だと言うほかはない。
原氏は、ユリアが生きていたというこのプロットについては最後まで悩んだと後年のインタビューで語っているが、その一方で、連載1年分の構想が先にあり、読者が納得できる形に持っていくにするために入念な準備をしたという。ユリアひとりを生き返らせるために南斗五車星と南斗六聖拳のキャラクターたちを配置し、その将がユリアであるとは悟られないように注意深く描いていたというから、驚かされたのも当然と言えるだろう。