漫画やアニメには数多くの“悪の組織”が登場するが、その頂点に立つボスキャラもさまざまである。部下思いで皆から慕われていたり、同情すべき事情があって切なかったり……と、そんな魅力のおかげで、下手すれば主人公サイドより敵サイドを応援したくなってしまうことすらある。
そんななか別の意味で魅力を放つのが、血も涙もなければ同情も共感も寄せ付けない圧倒的なボスキャラだ。とはいえフィクションとして見るぶんには良いものの、彼らの部下として働くのは絶対にイヤ……。今回はそんな“絶対に上司になってほしくないボスキャラ”を独断と偏見でセレクトして紹介していく。そもそも悪の組織で働くのが嫌だなんてことは、いいっこなしである。
※以下には、コミック『鬼滅の刃』、『BLEACH』、『HUNTER×HUNTER』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■“パワハラ会議”にドン引き…『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨
“上司になってほしくない”というワードを聞いて、吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』の鬼舞辻無惨を真っ先に思い浮かべる人は多いだろう。
彼はきわめて自己中心的かつ傲慢な性格で、怒りの沸点が低くすぐにキレ、そのうえ自分以外の存在をなんとも思っていない。そんなわけで無惨の部下たちは何かミスしたときはもちろん、そのときの気分次第でサクッと処刑されてしまう。無惨にとって、彼らの命は羽根よりも軽いのだ……。
そんな彼のブラック上司っぷりを知るには、かの有名な“パワハラ会議”をチェックするのが手っ取り早い。第1回(原作6巻収録の51話、52話)と第2回(原作12巻収録の98話)があるのだが、とくにひどいのは前者のほうだ。
そもそも前提として、参加者たる下弦の鬼たちは無惨の許可なしで発言することはできず、一方的に叱責を浴びるのみ。つまり“会議”という名称では呼ばれているものの、まったく機能していないのだ。しかも無惨は鬼の思考を読めるため、心の中でまずいことを思えば問答無用で殺されてしまう。
無惨の言葉は絶対であり、彼が一度こうと決めればどんな弁明も釈明も通用しない。何か発言しようものなら「お前は私の言う事を否定するのか?」「私は何も間違えない」と殺されてしまうので、じゃあもうどうすればいいんだよという感じである。
4月から放送開始されるアニメ3期では、第2回パワハラ会議の様子も見どころのひとつ(!?)だ。ちなみに第1回パワハラ会議は、アニメ第26話で描かれている。声も動きもついてパワーアップした無惨様の理不尽っぷり、ぜひ漫画とあわせてチェックしていただきたい。
■圧倒的な力と恐怖で組織を支配する『BLEACH』ユーハバッハ
久保帯人氏による『BLEACH』の最終章・千年血戦篇に登場するユーハバッハも、なかなかに強烈なブラック上司だ。
彼は滅却師の組織“見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)”の皇帝で、圧倒的な力とカリスマ性、そして何より恐怖で部下たちを支配している。一見、物腰穏やかかつどっしり構えたボスキャラで、だからこそ容赦なく部下を切り捨てる姿が恐ろしい。
ユーハバッハ流の“パワハラ会議”もとい報告会は、“自分の前で争いをした”という理由で部下・リューダースの腕を切り落としつつ、「私は争いを好まんぞ」と言ってのけるシーンから始まる。しかもそのあとに笑顔で「平和のための報せを聞こう」と続けるところが怖い。
この報告会ではリューダースともう一人・イーバーンという部下が殺されてしまうのだが、どちらのケースでも理不尽っぷりが炸裂している。
リューダースの場合は、彼が“今”ではなく“未来”の話をしたことに不快感をおぼえ、「今 私の前に居るお前は預言者か?」「ならば何故 遠い未来の話などする?」「私は “今”の話が聞きたい」とガン詰めした後に殺害。
それを目の当たりにして恐れおののくイーバーンを、「お前には特に賞すべき点も罰すべき点も無い」と束の間安心させたうえ、“役目が終わったから”と始末した。真意が読めない質問で追いつめたり、いったん持ち上げて次の瞬間に落としたりと、人の心をコントロールする術を心得ているところに恐怖してしまう。
ちなみに、このシーンはアニメ『BLEACH 千年血戦篇』で第1話から第2話にかけて出てくるが、ユーハバッハ役を務める菅生隆之の声が絶妙なこともあり、よりいっそう凄味が増している。