藤子・F・不二雄氏による『ドラえもん』ののび太というと、ドラえもんに頼りっぱなしで、ぐーたらしてばかりいて、学校のテストでは0点を連発し、親や先生にしょっちゅう怒られていて……と、情けない姿をイメージする人も多いだろう。
しかしもちろん彼はそれだけではなく、優しさと勇気を兼ね備えていて、友だちのために身体を張ることだってできる。良いところもダメなところも全部ひっくるめて、魅力的なキャラクターなのだ。
今回は、そんなのび太が原作漫画で披露した名言(&迷言)の数々をご紹介したい。思わず共感したり、なるほどと頷いてしまったりする深いセリフばかりで、知る前と知った後ではのび太に対する印象も変わるはずである。
なお、本記事内で記載している巻数はすべててんとう虫コミックスのものを指す。
のび太はその名の通り、のびのびとしたおおらかな少年だ。勉強も運動もからっきしダメだが卑屈になりすぎることはなく、のんびりマイペースに毎日を楽しんでいる。そのあっけらかんとした様子から、人生を前向きに生きるコツを教えられた人も少なくないだろう。
そんな彼の美点がよくあらわれているのが、「いちばんいけないのは 自分なんかだめだと思いこむことだよ」という有名なセリフ。これは「好きでたまらニャい」(7巻収録)にて、恋に悩み自分を卑下していたドラえもんに向けて放たれたものだ。
周りにバカにされたり笑われたりすることの多いのび太だからこそ、自分で自分を認めてあげることの大切さを知っているのかもしれない。彼はこのセリフに続けて「自信をもて! ぼくは世界一だと!」とドラえもんを激励しており、そちらもあわせて忘れがたい場面である。
意外と鋭い観察眼を持っているのび太は、しばしば“気付き”を得ては深い言葉をつぶやく。たとえば、スネ夫としずかちゃんとそれぞれの親を交換する「ママをとりかえっこ」(3巻収録)では、紆余曲折のすえに「けっきょく、親だって、人間だもんな」という結論に至っている。
大人でさえ忘れがちなこの真理に小学生にしてたどり着くとは……。それにスネ夫が返した「ときには、ごかいでおこったり、やつあたりすることもあるよな」「神さまじゃないんだもんな」という言葉もなかなか深い。子どもの立場と親の立場、どちらから考えてもぐさっと刺さる言葉だ。
そのほか、「はじめは新鮮な感動があったんだな、なにごとも……」(29巻収録「思い出せ!あの日の感動」)、「正義を守るにも力がいるんだなあ」「力がほしいなあ…」(27巻収録「10分遅れのエスパー」)など、のび太が何気なくこぼす言葉にハッとさせられることはよくある。