■2つの勢力の間で翻弄され続けた戦士

 主人公・エレンと同じ第104期訓練兵団に所属し、リーダー的存在として頼りにされていたライナー・ブラウン。しかし、その正体は敵国であるマーレ国からのスパイだった。

 ライナーは過酷な運命を背負って生きてきたことで、調査兵団の兵士としての人格とマーレ国の戦士としての人格が共存。自らのことを「半端なクソ野郎」と言い、誰よりも精神的に追い詰められていることがわかる描写には、多くの読者がライナーの死亡を予感した。

 しかし、物語が後半に進んでいき、マーレ編で何度も死の直前まで追い詰められると、逆に生存フラグが立ち始める。心的外傷によりエレンに「殺してくれ」と懇願したり、自殺を図ったり、巨人化したファルコに食べられそうになったりなど、死に近すぎたことで、死にたくても死ねないという立ち位置になった。

 作者である諫山氏のお気に入りとも言われているライナーは、物語序盤では鎧の巨人であることからエレンの最大の敵の一人として描かれながらも、その人間らしさから読者からも愛されているキャラクターだ。これまでの確執から解放されたライナーが生きる未来が明るいものであることを望まずにはいられない。

■母親への愛を通して成長した104期のムードメーカー

 第104期訓練兵団に所属し、おバカでお調子者なムードメーカーとして場を明るくしてきたコニー・スプリンガー。残酷な世界観において、同期のサシャとともにふざけあう姿は読者の心も癒してくれる存在だ。

 しかし、母親を巨人化させられてしまったり、双子とまで評したサシャを失ったりと、コニーもまた辛い戦いを強いられることになる。特に、巨人の正体が判明するきっかけとなった母親や村人たちの巨人化は、読者にとっても絶望を感じたシーンだった。
 この出来事が発生する前、コニーが故郷に戻ると言い続けたことで、死亡するのではないかと予想されるようになったように思う。しかし、そんな死亡予測をものともせず、巨人化した母親の存在を通して成長していった。「だから…困ってる人を助けに行こう」というコニーのセリフにグッときた読者も多いのではないだろうか。

 持ち前の陽気な性格で作品を明るくしてくれたコニー。それだけでなく真っすぐで熱い性格で暗く沈みがちなストーリーを彩ってくれた貴重な存在だけに、結果的に最後まで生き残ってくれたのは、予想を裏切られた読者にとっても嬉しい誤算だったと言えるだろう。

 連載中に読者が「このキャラクターは死んでしまうのではないか?」と予想したが、最後まで生き残った『進撃の巨人』のキャラクター3人を紹介した。過酷な世界観の中で多くのキャラクターが死んでいくのに心を折られそうになりながらも、たくましく生き残り最後まで戦い抜いたこれらのキャラクターの姿には胸を打たれた読者も多いのではないだろうか。

『進撃の巨人』のみならず、壮大な物語が完結を迎えたとき、「この世界で生きていくキャラクターたちの未来」に思いを馳せるのもまた楽しみ方のひとつだ。自由に生きられるようになった世界で、生き残ったキャラクターたちはみな幸せに暮らしてほしいものだと切に願う。

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