■すべてを失った過去を持つ『忍たま乱太郎』きり丸

『忍たま乱太郎』および、その原作である尼子騒兵衛氏の『落第忍者乱太郎』に登場するきり丸も、守銭奴キャラとして有名である。

 彼は忍術学園の入学金を40種類以上のアルバイトで稼いだ苦学生で、入学してからもあちこちで働くタフで偉い少年だ。だから“守銭奴”というと言葉が悪いような気もするが、お金が好きすぎて目が小銭の形になってしまう場面だけを見れば、まあそう評されても無理はないだろう。

 きり丸はお金が好きすぎて、さまざまな特殊能力(?)を身につけている。たとえば、数km先で落ちた小銭の音を聞き分けたり、聴覚や嗅覚で小銭の真贋を見極めたり、算数が苦手なのに銭の単位がつけば8ケタの計算をたやすくこなしたり……と、その徹底ぶりには感心させられてしまう。

 そんなきり丸は幼い頃に故郷の村を焼かれ、戦災孤児として貧しく生きてきたという過去を持つ。普段は明るく過ごしている彼だが、ふとしたときに見せる大人びた表情はその過酷な生い立ちを物語っているようだ。それを踏まえると、お金関係の話ではしゃぐ彼の姿にもなんだか切なさを感じてしまう……。

 ちなみにきり丸は担任の土井先生と同居しているのだが、土井先生もまた彼と似たような境遇にあるようだ。似たもの同士であるふたりが家族のように暮らしているところを見ると、ほっこりと同時にしんみりもする。つらい過去のある彼らが、今後はしあわせに生きられるよう願うばかりだ。

 

 お金が好きすぎてキャラが壊れたり、特殊な能力を身につけたり、そのがめつさで周りを困らせたり……。その裏にどんな事情があるかを知ると、守銭奴キャラたちに対する印象も変わるかもしれない。

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