『はじめの一歩』や『修羅の門』にも…ライバル同士の対決が胸アツだった“講談社の格闘技漫画”3選の画像
講談社コミックス『はじめの一歩』第129巻(講談社)

 格闘技漫画では、ときに主役を食うほどの注目度を集めるライバル同士の戦いが存在する。主人公が戦うときとはまた違ったイメージで面白く、ハラハラする展開に胸が熱くなったものだ。

 そこで今回は、『週刊少年マガジン』や『月刊少年マガジン』(ともに講談社)の作品からとくに大好きなライバル同士の一戦を紹介していきたい。

■まさに頂上決戦!『はじめの一歩』浪速のロッキー「千堂武士」VS孤高の狼「ヴォルグ」

 まずは、森川ジョージ氏による『はじめの一歩』。主人公・幕之内一歩がフェザー級日本タイトルマッチで伊達英二に敗れ、世界挑戦のために伊達がベルトを返還し、空位となった王座をかけてライバル同士が激突した。

 それが、浪速のロッキー「千堂武士」と、孤高の狼「ヴォルグ・ザンギエフ」の対戦だ。ともに読者からの人気も高く、まさかの二人が激突するとのことで筆者も胸が高鳴ったものだ。この対戦には、主役の一歩ですら興奮を抑えられなかったほどである。

 会場は千堂の地元で熱狂的なファンが多い大阪で行われたため、ヴォルグは完全アウェイの戦いとなっていた。

 もともと旧ソ連出身のヴォルグはアマチュア時代に200戦以上の戦績を積み上げており、すでに完成されたボクシングスタイルは当時の王者・伊達よりも強いイメージだった。必殺技である千堂の「スマッシュ」とヴォルグの「白い牙(ホワイトファング)」。これが決まっても、どちらも倒れないほど強い精神力を見せつけていた。

 ダウンしても熱狂的なファンの声援を受けて立ち上がる千堂と、ブーイングを受けながらでも立ち上がるヴォルグ。千堂のキャラも好きだが、どうしてもヴォルグを応援したくなってしまうものだ。

 異国の地で連敗を喫すれば、“商品価値がない”と解雇されてしまう天才肌で母親思いのヴォルグ……。結末はアンラッキーなダウンを取られて千堂の勝利となり、彼は引退を決意することに。残念だったが、それが一歩の闘志に火をつけることにつながったな。

 まあ、この二人に勝利している一歩も凄いが、のちにライバルで一番早く世界王者になったのが実は復活したヴォルグだったという展開にも痺れたぞ。できれば一歩の最大のライバルといえる、宮田一郎とヴォルグの対決も見てみたいな。

■陸奥九十九も注目の大一番!『修羅の門』重戦車「イグナシオ・ダ・シルバ」VS天才柔術家「ラモン・グラシエーロ」

 強すぎる主人公といえば、川原正敏氏による『修羅の門』の“陸奥圓明流”の継承者である陸奥九十九ではないだろうか。そんな九十九も注目した大一番が、ブラジルで行われたヴァーリ・トゥードの重戦車「イグナシオ・ダ・シルバ」と天才柔術家の「ラモン・グラシエーロ」の対戦だ。

 物語はラモンの兄・レオンを軸に回っていたので、決勝戦は九十九とレオンが戦うのだろうと予想していたのだが、イグナシオとラモンも相当の実力者。両者が早々に激突することになり、どちらが勝つのだろうとドキドキしたものだった。

 パワーのイグナシオとスピード&技のラモンの戦いだったが、どんな技を出されようともパワーでひっくり返すという底知れない強さをイグナシオが見せつける。

 ブラジル編で序盤から登場するイグナシオは九十九の強敵になるだろうと誰もが思っていたと思うが、最終的には圧倒的なパワーでラモンの腕を折り、完勝……。終始にこやかな表情なので、どれほど強いのかが分からないくらいだったな。

 それにしても、ラモンが戦意喪失してからの祖父・ビクトルの冷たさといったら容赦なかったな。セコンドで“腕が折れても戦える”などと言っていた……。いやいや、お前がイグナシオと戦ってみろよと言ってやりたいぞ。

■柔が勝つか剛が制するか!『新・コータローまかりとおる! 柔道編』「西郷三四郎」VS「醍醐大悟」

 最後は、蛭田達也氏による『新・コータローまかりとおる! 柔道編』で登場した、いじめられっ子の西郷三四郎といじめっ子の醍醐大悟だ。主人公は前作同様、もちろん新堂功太郎で、彼の最強のライバルは天才・伊賀稔彦なのだが、このシリーズはもう一人の主役といえる西郷の成長がなんとも面白かった。

 高校1年生の小柄な西郷は、10年間柔道に真摯に向き合うも白帯のままで、小学生に恐喝されるほどの気弱さ。一方、重量級で中学生時代から有名な有段者の醍醐は手が付けられない問題児で、第一柔道部で柔道は続けているものの、もはや不良といってもおかしくないほど。当初は、西郷にも壮絶ないじめを行っていた。

 しかし、西郷は意識を失うと“無敵コマンド”が発動し、周囲の人間を誰彼構わず投げ飛ばす強さを見せる。培ってきた柔道センスは「山嵐」という幻の技を使えるほど卓越したものとなっており、無意識のうちに醍醐や功太郎ですら投げ飛ばしてしまうほどだった。

 屈辱を感じた醍醐は、その後“ケンカ柔道”の第十三柔道部に入部。鬼顧問の鮫島敏樹からもう一つの幻の技「天狗投げ」を伝授される。

 一方、柔道をケンカに使ったからと、第一柔道部主将・伊賀に退部させられた西郷。だが、そのおかげでコータロー率いる極端流に入部することとなり、徐々に覚醒していき、遂には意識したまま「山嵐」を使えるようになる。

 最終的に西郷と醍醐は学内予選で対決することに。スピード&技の西郷とパワーの醍醐という闘いとなるが、実は西郷は長年の努力の積み重ねによる凄まじい筋力と、醍醐が驚くほどのパワーも秘めていた。

 実力のすべてを発揮できるようになった西郷は、もはや伊賀に匹敵するほどの強者で醍醐に勝利。問題児の彼を改心させるほどの芯の強さを披露していた。

 いや〜本当にカッコよかったし、努力が報われたシーンはスカッとしたぞ。

 

 さて、これらの対決以外にも当然面白いライバルの凌ぎ合いはたくさんあるものだ。主人公が強いほど、脇役同士の一戦にも注目が集まるものだろう。ここで勝利した彼らはときに主役を食うほどの活躍をしており、一層盛り上げてくれたものだった。