■友人に裏切られても懐の広さを見せた…「毛利小五郎探偵廃業の日」

 アニメのオリジナルストーリー「毛利小五郎探偵廃業の日」も、小五郎が自力で解決した事件だ。これは小五郎の警察学校の同期・竹岡勲が関係した事件である。

 竹岡は5年前に古美術商・衣笠栄が襲撃され大怪我を負った事件の際、竹岡の妻の目撃証言により金融会社オーナー・蒲生良造を逮捕した。しかし、蒲生は証言者を金で雇い、その後無罪に。誤認逮捕の責任を取って竹岡は警察を辞めることになり、妻は自分のせいで夫が辞職したと後悔し、闘病の末、他界してしまう……。

 今回、竹岡は衣笠が何者かに殺された事件をきっかけに、蒲生がやはり5年前の事件に関与していた事実を知る。そこで妻の無念を晴らすため、蒲生と、共犯だった蒲生の甥・新井京介を殺害することを計画する。

 この事件では、かつての仕事仲間で友人でもある竹岡に小五郎は利用されてしまう。竹岡は二人を自殺に見せかけて殺し、その責任を小五郎に押しつける形にしたのだ。

 一時は無実の人間を自殺に追い込んだとマスコミや世間に非難され、探偵を廃業しようとする小五郎だったが、ふとしたことから違和感に気づき、事件解決へと一気に動いていく。

 最終的に竹岡は観念して罪を認め、崖から身を投げ死のうとする。しかし、小五郎は竹岡の手を掴み、“生きて罪を償え”と迫った。友人に裏切られてもすべてを許し、信念を持って正しい道へと導いた、これまた小五郎の懐の広さが垣間見えるカッコ良すぎる事件だった。

 

 毛利小五郎が自力で解決した事件があるのは意外!と、思った人もいたことだろう。普段はコナンの麻酔銃で眠らされてばかりのヘボ探偵扱いの小五郎だが、彼は親しい人間が事件に関係すると、とくに力を発揮する。大切な人のために事件を解決する姿は、まさに“名探偵”そのものなのである。

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