■死と隣り合わせの世界で常に笑顔だった真亜久
最後は、『別冊少女コミック』にて2001年から2017年まで連載された田村由美氏による『7seeds』。地球が荒廃した未来を舞台に、人類の種を後世に残すため冷凍保存されていた若者達が未来の地球でサバイバルをする物語だ。
物語の中ではさまざまな災害やトラブルに見舞われ多くの者が命を落とす。また時おり主人公らが目覚める前の過去に地球に何が起こったかも描かれ、ページを開くたびに訪れる自然の恐ろしさや人間の醜さにやり場のない嫌悪感すら抱いてしまうほどだ。
物語の前半に登場する避難用地下シェルターの「龍宮」を舞台にしたストーリーはそれが顕著だった。ここは生き残るべく選ばれた人々が巨大隕石落下による地球壊滅を知らされずに生活をし続けていた場所だが、謎の病原体「ダニX」の感染が広まり最終的に絶滅する。
このダニの脅威から未来の人々を守ろうとし、最終的に一人で死んでいったのが龍宮編の主人公の腹話術氏・茨木真亜久(いばらきまあく)だ。彼はこの世界の真実を知りながらも住民たちを元気づけ続け、最終的にはダニの被害を広げないよう尽力し、シェルターでの出来事を日記に残して自害する。遠い未来で、一人きりでガイコツになった状態で主人公らに発見されたのだ。
この龍宮編はファン人気も高い悲しい物語である。恐怖や戸惑いの気持ちがありながらも笑顔でい続けた彼や、事情を知って龍宮を終わらせることに尽力したシェルターの皆の生きざまには涙を流さずにはいられない。
それぞれ作品のジャンルは違うものの、壮大な世界観で生と死を見つめさせてくれた名作漫画の数々。彼らの人生をいつまでも心に留めておきたい。