『機動戦士ガンダム』前夜…1978年放送『無敵鋼人ダイターン3』との興味深い関係性とはの画像
『無敵鋼人ダイターン3』Blu-ray BOX (C)創通・サンライズ

 2023年6月で放送開始から45周年を迎える『無敵鋼人ダイターン3』は、日本サンライズ制作、富野喜幸総監督、大河原邦男メカニックデザインの巨大ロボットアニメだ。同作最終回の翌週からスタートした後番組は『機動戦士ガンダム』で、こちらは今なお続くロングシリーズとなった。この2つの作品は、さまざまな面白い関係性があることがファンに知られている。

■スタッフだけでなくキャストの共通点も多かった

『無敵鋼人ダイターン3』と『機動戦士ガンダム』は、名古屋テレビの同じ時間帯に放送されていたアニメで、多くのスタッフが『無敵鋼人ダイターン3』から『機動戦士ガンダム』へ引き継がれている。

 日本サンライズ制作、富野喜幸総監督、大河原邦男メカニックデザインと、主要スタッフが共通していることに加え、声優についても『無敵鋼人ダイターン3』と『機動戦士ガンダム』の両作に出演している人が多い。

 たとえば『無敵鋼人ダイターン3』で主人公・破嵐万丈役を務めた鈴置洋孝は、『ガンダム』でブライト・ノアを演じた。他にもメインキャラクターの三条レイカとセイラ・マスを井上瑤、トッポとミライ・ヤシマを白石冬美が演じ、万丈や、その仲間たちがそのままホワイトベースクルーに引き継がれているという面白いキャスティングがなされている。

 また『無敵鋼人ダイターン3』ではメインキャラクターではなかったものの、『機動戦士ガンダム』で存在感を高めた声優も多い。それが、シャア・アズナブル役の池田秀一やギレン・ザビ役の銀河万丈、ガルマ・ザビ役の森功至で、彼らは『無敵鋼人ダイターン3』では敵役のコマンダーの声優として出演している。

 他にもララァ・スン役の潘恵子、ナレーションやデギン・ソド・ザビ役の永井一郎、ハヤト・コバヤシ役の鈴木清信、ランバ・ラル役の広瀬正志、ドズル・ザビ役の郷里大輔、キシリア・ザビの小山茉美などが、『無敵鋼人ダイターン3』ではサブキャラやモブキャラの声を当てている。

■『ガンダム』に持ち越された『ダイターン3』のメカデザイン

『無敵鋼人ダイターン3』でデザインされたグラフィックを流用したのが『機動戦士ガンダム』のホワイトベースやハロだ。

 ホワイトベースは『無敵鋼人ダイターン3』ではフリーダム・フォートレスとして登場する予定だった。デザイン画には、中心部分が黒いものと、全体的に黄色いものが存在しているが、どちらも『無敵鋼人ダイターン3』では未登場となっている。またどのような形で登場する予定だったのかは資料集などでも語られていない。もしかすると、戦艦ではなくサポートメカとして登場する予定だった可能性もある。

 またハロも同じく、『無敵鋼人ダイターン3』で作られたデザインであることが大河原邦男氏により語られており、小型作業用ロボット「メカマル」のひとつとして『ダイターン3』に1話限りで登場する予定だったところ、『ガンダム』への採用が決まり、見送られたのだとか。今となってはハロは、宇宙世紀シリーズだけでなく、多くのガンダム作品に登場し、ガンダムを象徴するマスコットキャラクターとなった。

■多作品へのカメオ出演

『無敵鋼人ダイターン3』のキャラクターが密かに他のガンダム作品に混じっているときがある。ストーリーに絡むことはないが、イースター・エッグとして楽しめるようになっていて面白い。

『機動戦士ガンダム』ではソロモン戦やア・バオア・クー戦に登場する連邦軍の大部隊に混じって、ジムカラーのダイターン3が見受けられる。また14話「時間よ、とまれ」ではコマンダー・エドウィンにそっくりな手品師や、それを見ているジオン兵が万丈とギャリソンと似た容姿で描かれているなど、密かなファンサービスが行われた。

 また、『機動武闘伝Gガンダム』にも、同じようにカメオ出演したダイターン3の姿が確認できる。加えて『ガンダムビルドファイターズトライ』に登場する「トライオン3」の、特にプラモデルがダイターン3っぽいと話題になった。全体的なカラーリングやフォルムが似ているが、特に角のデザインがそっくりだ。

 物語的な繋がりは無いものの、『無敵鋼人ダイターン3』と『機動戦士ガンダム』には多くの興味深い関係性がある。ハロは最新シリーズ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』にも登場しており、『ガンダムビルドファイターズトライ』は2014年の作品だ。1978年制作の『無敵鋼人ダイターン3』が、時を超えて現在にも影響を与えていることには、壮大な歴史の流れを感じざるを得ない。