■プロレスラーに転身した横綱に激似だった「山のフドウ」

 最後に紹介するのは「山のフドウ」。「若草色の軍団」を率いる、気は優しくて力持ちを体現したような大男である。野党たちにやられっぱなしの気の弱いキャラを演じているが、実はかつては「悪鬼のフドウ」と呼ばれたほど極悪非道な男で、その暴虐ぶりは少年時代のラオウも恐怖したほどだった。

 そんなフドウの過去のビジュアルのクセが強かった。昭和の時代、「双羽黒」という四股名で横綱まで昇進しながら一度も幕内優勝できず、師匠とのトラブルで突如プロレスラーに転身、マスコミに叩かれた故・北尾光司氏にそっくりなのだ。そう思って見ると、過去のラオウを北尾氏が圧倒してるようにしか見えない。“大相撲世紀末場所”の様相だ。

 その後フドウは、少女だったユリアの慈愛に魅せられ改心。善人モードに180度切り替わり、孤児たちを養子にして育てている。最後の将を守るためにフドウは再び悪鬼に戻る決意をするが、過去に抱いた恐怖を克服しようとするラオウとの対決で絶命してしまった。

 ケンシロウを将に会わせるべく暗躍し、道案内を行い、最後は命を懸けてラオウと戦うという一人でいくつもの大役をこなした、ある意味で南斗五車星のMVPと言ってもいいキャラだろう。しかし現在と過去のビジュアルのギャップはすごかった……。

 

 ケンシロウが出会い、共闘し、時には死闘を繰り広げた「強敵(とも)」たちの裏で、南斗五車星は常に暗躍していた。彼らなくして『北斗の拳』の壮大な物語は完成できなかったであろう。ぜひ、彼らの漢ぶりとともに“クセの強さ”にも着目して読み返してみてほしい。

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