■「ドーピングコンソメスープ」で筋肉肥大したが…

 また松井優征氏によるデビュー作『魔人探偵脳噛ネウロ』(集英社)に登場する至郎田正影も、少年漫画に登場する代表的なドーピングキャラのひとりだろう。

 至郎田は、食べれば成功を呼ぶことで芸能人やスポーツ選手の御用達となっているレストラン「シュプリームS」のオーナーシェフで、店の予約は1年待ちという盛況ぶりだった。しかしその裏には秘密があり、料理の中に違法薬物や筋肉増強剤が隠し味として入れられていた。そのため、一度食べたら忘れられない味として客の評判となっていた。

 至郎田の悪行はネウロによってあっさりと見破られるが、追い詰められた彼は自らの血管に「ドーピングコンソメスープ」なる究極の料理を注入する。これは多種類の薬物を、玉ねぎ・セロリ・ニンニク・クレソンなどの食材とあわせ七日七晩煮込むことで完成した至郎田の作ったドーピング料理の最高傑作。これにより、至郎田の肉体は一気に肥大し、上半身だけ筋肉の塊のような化け物へと変貌を遂げたのだった。

 だがネウロはまったく動じず。片手で攻撃を受け止めるとそのまま脳内を掻き回し、至郎田は全ての謎を食われてガリガリの廃人状態となってしまった。薬物であらゆるものを支配しようとした至郎田の末路は、悲惨としか言いようがないものだった。

 その他には、2022年6月にNetflixでのアニメ配信が行われた『スプリガン』のボー・ブランシェなども代表的なドーピングキャラと言えるだろう。

 軍人として強くなるために自身をあえてドーピング漬けにしたボー。筋肉量を増加させたことによって、一時期は主人公・御神苗優を翻弄するほどのスピードを手に入れるも、やはりスプリガンには歯が立たず、「あなたの筋肉は伊達の筋肉です」などと真っ向から否定されてしまう。その後はドーピングに頼らない肉体強化を行ったボー。愛すべき「筋肉バカ」として、敵ながら人気の高いキャラでもあった。

 ドーピングで強くなったキャラのほとんどには、悲惨な末路が待っている。そこから脱却することで、新たな道を進むことに繋がるので、まずは敗北を知るのが大事だろう。

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