■湘北が奮起するたびに見せる笑み

 安西先生や湘北チームメイトから勝利への思いを託されて、桜木花道は20点以上の点差にも動じることなく、勝つ気満々でコートに戻る。その姿を見た河田は「うは」と嬉しそうに笑った。インターハイ初出場の弱小校がインターハイ三連覇の絶対王者相手に勝つ気でいるなど、普通なら嘲笑されるか軽くあしらわれそうなものだが……。

 河田への畏怖から見失っていた自分を取り戻そうと赤木が雄たけびを上げる姿にも、やはり彼は「ほっほーーう」「吼えたって 何も やらせねーぞ」と嬉しそう。また、河田にマークされた初心者・桜木が「はっはっはっ 死ぬ気でかかってこい 丸ゴリ‼」「それでも この天才は止められまい‼」と最強のセンター相手にイキったときだって、腹を立てるどころか「うはは!」「わかった‼」と、最高に良い笑顔を見せた。

 王座にあぐらをかくどころか、常に挑戦者を求め、頼もしく受け入れる。これぞ王者の貫禄だろう。

■敵を冷静に観察して賞賛する器

 リバウンドの名手・野辺将広を制した桜木に「やるでねか‼」と賞賛の言葉をかけた河田。赤木に直接「桜木をオレにつけろよ」「奴を観察してーんだよ」と言うほど、桜木には関心を引かれていたようだ。

 その後は冷静に桜木を観察し、脅威となるのはジャンプ力だということに気づく。“跳ばせないことが第一で、ボールはあとでとればいい”という河田の判断には、ベンチに下がった野辺も思わず手を打つほどだ。

 その冷静な観察眼をもって、桜木が背中を痛めた際にも河田はいち早く異変に気付き、「無理はいかんぞ 赤坊主…」「お前には将来がある」と声をかけた。同時に「むかってくるなら 手加減は できねぇ男だ」「俺は」とも。

 敵に容赦はしないが、認めた相手は素直に賞賛し、まるで味方のように将来を案じる。その器の大きさは、なかなか高校生で身につけられるものではない。

 

 能力はもとより、成熟した精神力や人間性も兼ね備えた河田は、まさにすべてが“超高校級”のプレイヤーだ。自分が高校生だったころはおろか、大人になった今でも到底勝てる気がしないと感じる読者は多いのではないだろうか。

 そんなスーパー高校生たちの活躍を目の当たりにして、ちょっとばかし気を引き締めるのも、また本作の楽しみ方の一つなのかもしれない。

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