『ドリフターズ』に『へうげもの』フィクションの「織田信長」といえば?名作漫画で登場した“とんでもない”信長像3選の画像
モーニングコミックス『へうげもの』第 1巻(講談社)

 1月8日からスタートした松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』で、岡田淮一演じる織田信長が「俺の白兎」など数々のパワーワードとともに話題を集めている。

 信長は日本の戦国時代・安土桃山時代に活躍した尾張国(現在の愛知県)出身の武将、大名。幼少期はその奇抜な言動から「うつけ」と呼ばれたが、火縄銃を用いた「三段撃ち」や「楽市楽座」の制定など非凡な才能をみせた人気武将だ。

 そのため信長を扱った「創作物」は多く、クローン高校生や女性主人公を口説くイケメン、なかには目からビームを出したり美女になったり、犬、銃、悪役令嬢など、その信長像もさまざま。

 だが信長には恐ろしい逸話が数多く存在する。茶坊主を食器棚ごと刀で斬り殺す、浅井長政の頭蓋骨に金箔を貼り宴会で披露、歴史的な事件「高野山の焼き討ち」など、当時の武将や家臣にとって恐怖の対象でもあったのだ。

 そこで今回は、筆者が選んだ「名作漫画に登場した“とんでもない”信長」をいくつか振り返ってみたい。

■悪だくみ好きなノブさんが一線を越え「沈黙」する恐怖

 近年、古今東西の歴史的英雄バトル作品が多いなか、2009年より『ヤングキングアワーズ』で連載されている平野耕太氏の『ドリフターズ』に登場する織田信長はひと際異彩を放っていた。

 本作は戦国武将・島津豊久が「ドリフターズ」として異世界転移し、仲間とともに同じ転移者「エンズ」と戦う物語。作中での信長は、主人公・豊久と行動するなかで彼の本質を見抜いた数少ない人物として描かれている。また、長年「農奴」として支配されたエルフを蜂起させるため、敢えて彼らの麦畑を焼き払うなど人心掌握にも長けていた。

 異世界では「ノブさん」などと気安く呼ばれ、以前は20万の軍勢を率いた自身が今は泥臭い戦いに身を投じる状況を「面白えなぁ」とうそぶく豪胆さをみせている。さらに、火薬作りや鉄砲の増産など革新的な発想力や実行力、持ち前の知略とはったりをフル活用することでサンジェルミさえ丸め込んでしまうほどの悪だくみっぷりだ。

 セクハラや中二発言など問題の多い人物だが、ハンニバルや豊久に翻弄され通しの苦労人でもあり、迷惑かけ通しだった織田家に心の中で謝罪するも明智光秀への悪態だけは忘れない。

 豊久が背負うべき負を自ら引き受け、ギャグ要員として物語を盛り上げ続ける信長が、その本来の恐ろしさを垣間見せたのが「沈黙」だ。

 エンズ側に光秀を見つけた信長はあらん限りの罵倒を叫び続けるが、息子・信忠の死を揶揄された瞬間、怒りの一線を越え「沈黙」してしまう。それは「相手を絶対に生かしておかぬ」という意味であり、彼を知る“諸将皆々”が恐れる姿だった。

 そんな彼を止めたのが豊久と那須与一だが、もしも彼らが傍にいなかったのなら信長は再び滅びの道を歩んでいたのかもしれない。奇妙な因縁で結ばれた信長たちの活躍と、本作の再開を心待ちにしたいと思う。

■派手好きで壮大な夢を抱く魔王が最後に淹れた「茶」の相手

 2005年から2017年の間『モーニング』で連載された山田芳裕氏の『へうげもの』では、織田信長とある家臣との関係性が斬新な解釈で描かれている。

 本作は古田左介(織部)が武功をたてつつ、戦国時代に生まれた「茶器」や「数奇(風流)」を極めんと奮闘する物語。

 作中での信長は羽根つき帽子にマント姿でゾウに跨ったり、王冠を被りマントの首元に梅の枝を生けたりと、派手な異国装束や巨大なものを好む人物だ。

 織部の失態に「首をはねるぞ!!!」と脅しはするが、松永久秀が所有していた大名物「平グモ」を粉々で持ち帰った際には爆笑するほどの鷹揚さを見せた。一方で、信長の船を茶化した商人を斬り殺し、家臣や周囲を恐怖に陥れてもいる。

 そんな信長を語るうえで外せないのが、豊臣秀吉とのエピソード。本作では明智光秀が攻め入る前に秀吉が本能寺へと忍び込み、自身の刀で信長の胴体を上下真っ二つに斬殺しているのだ。

 ところが信長は斬られた胴を片手でくっ付けると、湯のかわりに自分の体から流れる血を使って点てた茶を秀吉に振る舞う。そして多くの人間たちと関わる中で、秀吉とはギブ・アンド・テイクの関係が築けたと語り、最後に「『愛』よ」と伝え絶命する。

 信長の豪胆さに気圧されながらも秀吉が涙する衝撃的なこのシーン。連載終了後、今なお強烈な「信長像」として読者の心に深く刻まれているのは間違いないだろう。

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