■フドウとバットのおかしすぎる変装
アニメオリジナルエピソードの中にもかなり斬新な変装があった。それが92話「よみがえった雲のジュウザ!俺はラオウを恐れない!!」の一幕だ。
ケンシロウとバット、リン、フドウは拳王の検問が行われている吊橋を渡るため、やむを得ず変装をしてやり過ごすことになった。拳王の部下たちに知られていた情報は、ケンシロウは胸に7つの傷がある男で、男女の子どもと大男を連れているというもの。
特にフドウの大きさは一目瞭然のため、そのまま通ったら間違いなくアウト。そこで考えたのが、バットを女装させてリンの姉ということにして、フドウを姉妹の父親ということにする作戦。フドウは頬被りをして農夫を装い、ケンシロウは藁の中に隠れて身を潜めていた。
そんなどう見ても怪しい農民一家の大移動を拳王の部下が一旦止めるも、聞いていた情報とは違うということであっさりと通してしまう。そして、あろうことか女装したバットのことを好きになってしまう部下までいる始末。ひとりの村人が、ケンシロウが藁の中に隠れているのを密告したことで、正体がバレてしまうことになったが、それまで一切疑われなかったのが凄い。
■サイズ感まで誤魔化したシャチの変装
そして変装はわりとうまくいったにも関わらずわずか1ページで見抜かれてしまったのが北斗琉拳第4の男・シャチ。
ケンシロウが海を渡り修羅の国へ足を踏み入れると、そこは想像以上に厳しい弱肉強食の世界が広がっていた。成長した男子は戦士として扱われ、戦いに破れた者には死か従者になる運命が待っている。そんな従者たちは「ボロ」と呼ばれ、足の腱を切られて自由を奪われてしまう。
そんなボロになりすましていたのがシャチで、彼は修羅の国の変革のために領主の命を狙っていたのだ。ボロたちはガスマスクのようなものを付けて、全身を布で覆っているので誰が誰か見分けがつかない。実際にシャチの扮装は完璧で、アニメ『北斗の拳2』では体のサイズまで変わっているではないかという徹底ぶり。もともとシャチはケンシロウと同じぐらいの身長だが、ボロの布を着込んだシャチが隣を歩くリンの半分ほどの背格好になっていた場面もあった。
このようにうまく化けたシャチだったが、原作では羅将ハンにわずか1ページで見破られてしまい戦闘体勢になってしまう。なかなか変装能力が高い男だが、殺意が隠せなかったためか羅将の目にはバレバレだったようだ。
この他には、レイが女装をして悪党どもから食料を奪っているシーンがあったりと、過酷な時代を生き抜く『北斗の拳』の人物たちの中には、自らの素性を隠して暮らす者は珍しくない。そんな真剣な世界だからこそ「でかいババア」のような誰の目にもバレバレな変装をしている者が、読者の印象に残ってしまうのだろう。