原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による漫画『北斗の拳』は1983年の『週刊少年ジャンプ』での連載開始から今年で誕生40周年を迎える人気作品である。199X年を舞台に、多彩な拳法による必殺技や強敵同士の対決を中心としたシリアスで殺伐とした世界観が描かれる同作。だがそんな中でも、見ようによってはシュールだったり滑稽だったりするシーンが時折顔を出すのが『北斗の拳』の作風で、同作のファンならばそうしたコマを幾つかは思い出せるのではないだろうか。
筆者がまず最初に思い浮かべるのが『北斗の拳』における「変装」。どこからどう見ても本人だとバレてしまう変装をしているのに、周囲の人間は誰ひとりとして気づかない。たとえばアミバがトキに変装したエピソードも、いくらトキの傷まで再現していたとはいえどうみてもトキに見えないのに、村人だけではなくケンシロウまで最初は信じてしまった。そこで今回はそんな『北斗の拳』から「バレバレな変装」をしてしまった名物キャラたちを振り返っていきたい。
■違和感だらけの「でかいババア」
『北斗の拳』のあり得ない変装といえば、「でかいババア」こと拳王の部下を外すことはできない。同作を読んだことがないという人にも、彼女、いや彼のビジュアルだけは知られているのではないだろうか。
その「ババア」は、ケンシロウたちが休憩するために入った店にいた老婆。天井に頭がつきそうな、およそ3メートルほどはありそうな筋肉質な巨体の持ち主で、親切そうな笑顔でケンシロウたちに快く水を提供してくれた。
だがそんな気配りをよそに、ケンシロウは「ばあさんその水のんでみろ」と言い放つ。実はこの水には毒が仕込まれており、まんまとそれを見抜かれた老婆は、天井に潜んでいた他の部下とともに攻撃を仕掛けたのだった。
老婆は「おれの変装をみやぶっていたのか〜」と焦るが、ケンシロウは「おまえのようなババアがいるか!!」と一蹴。そりゃそうだ、という全国の読者の声が聞こえそうなケンシロウのツッコミだった。
わずか数ページの登場ながら同作屈指の有名キャラでもある「でかいババア」。最後まで拳王の部下が変装していることを見抜けなかったのはマミヤだけという、そこもまたツッコミがいのある名エピソードだ。