■『天才バカボン』は主人公がバカボンのパパに変わった…!?

 一方で、作品名にあるキャラから別のキャラに主人公が代わってしまった……というのが『天才バカボン』だ。

 赤塚不二夫氏の代表作でもある本作。バカボンをはじめとする“バカボン一家”だけでなく、レレレのおじさんやウナギイヌなどの人気キャラや、赤塚氏の『おそ松くん』からイヤミもゲストとして登場し、ナンセンスギャグやシュールギャグなど幅広いコメディー要素が盛り込まれている。

『天才バカボン』は連載初期では作品名のとおり、のんびり屋で優しい男の子・バカボンが主人公を務め、彼を中心とした物語が描かれていた。しかし、主役の座は徐々に彼の父親である「バカボンのパパ」へと移っていく。

 赤塚不二夫氏の公認サイトによると、「連載が始まる前には愚かな兄(バカボン)と、賢い弟(ハジメちゃん)のふたりが中心となる予定でした」と記載されている。しかし連載が始まっていくと、バカボンの上をいく破天荒な「パパ」が人気を博した。その結果、「バカボンのパパ」が中心となったエピソードが多くなっていったようだ。

 あくまで主人公は「バカボン」のようだが、本作のようにファンの反応を見て主役のキャラが変化していった……という珍しい一例である。このような作品の歴史を知ると、また違った見方ができそうだ。

 

 作品名にあるキャラが主人公ではない作品を紹介したが、一方で作品名にあるキャラは、作品においてとても重要な役割であることがほとんどだ。いわば「主役」と呼べるような存在だろう。

 一方で主人公キャラたちは、語り手やツッコミ役など視点の中心となることで作品を引き立てていくことが多い。あらためて見ると、彼らはどちらも作品においてなくてはならない存在であり、お互いを引き立てる大切な役割を果たしていると思った次第である。

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