サッカーに野球にバスケットボールにテニスなど、これまで球技を扱った名作漫画が数多く描かれてきた。勝利までの特訓の様子だったり、試合での頭脳を使った駆け引きだったりなど魅力はさまざまだが、「魔球」や「秘打」といった独自の技が編み出されるフィクションならではの展開も外せない。
特に『週刊少年ジャンプ』に連載されるスポーツ漫画は、少年漫画の要素が組み合わさり、それまでに読んだことがなかったような驚愕の「技」が描かれることも。その中には使用者や、もしくは相手の体が壊れてしまうようなパワーを持つ、「必殺」と言って差し支えないようなトンデモ技もあった。
■相手を数十メートル吹き飛ばすショット
近年の作品でのすさまじい設定のスポーツ漫画の代表格といえば、許斐剛氏による『テニスの王子様』(集英社)を外すことはできない。キャラがそれぞれの必殺技を使うようになり、普通のスポーツ漫画ではおさまりきらないような展開がいくつも描かれた。
同作では数多くの必殺技が登場したが、中でも命に危険がありそうなものが、石田鉄が主に使用した「波動球」という必殺技だ。
名前からして『ストリートファイター』の波動拳や『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲が想像される、「波動」の文字からしてとんでもない破壊力がありそうな「波動球」。実際にこの必殺技は受け止めた相手を吹き飛ばす威力を持つ。
「波動球」は単純に力のみで相手に向かって打ち込む技だが、この球を受け止めた河村は手首を壊されて棄権。その他にも「波動球」の上位技である「弐拾壱式波動球」は、あろうことか河村を後方の観客席中央まで吹き飛ばし、まるで爆発が起こったかのようだった。
石田銀の「ワシの波動球は百八式まであるぞ」はかなり有名なセリフで、力のインフレが止まらない。「佰八式波動球」は照明の鉄塔を壊し、食らった相手をそのまま上空へと吹き飛ばしてしまうほどの威力を持つ。テニスで破壊活動ができてしまうとんでもない選手と言えるだろう。
■地面をえぐりながら進む超高速回転ボール
サッカー漫画の中でも特に異彩を放つのが、にわのまこと氏による『超機動暴発蹴球野郎 リベロの武田』。Jリーグ発足と同じ1991年から『ジャンプ』でスタートした同作は、ギャグと必殺技の要素で人気を集めた漫画だ。
同作で主人公の武田弾丸が得意とする必殺技が、ボールに強烈な回転を掛けることによって家一軒を余裕で吹き飛ばすほどのパワーを生み出す「バズーカ・チャンネル」というシュート。シュートを放った際には、ボールの軌道上に地面がえぐれている描写もあり、人間が普通に受け止められるシュートではないことも一目で分かる。
この必殺技は、脳波をα波から超常パワーを引き出す「ハラホロヒレ波」に切り替え、トランス状態となることで超絶的な威力のシュートを放つというものだ。熟練者が使用しても何もないが、未熟な状態で使用してしまうとリスクがあり、弾丸も使い初めの頃は使用後に幼児化。キーパーにも使用者にとっても危険きわまりないシュートだった。