自分だったら生きていける気がしない! 弱肉強食がヤバすぎる…震えながら読んだ「世紀末的」漫画のトラウマエピソード3選の画像
小学館文庫『漂流教室』第1巻(小学館)
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 近年、漫画やライトノベルなどで「異世界転生」作品が人気だ。現実世界から異世界へと転生した主人公がチート能力を得て活躍し、そこで体験する非日常的な出来事や体験に読者は興奮や爽快感を覚える。

 ならば、地球が終わってしまうような「世紀末的」作品も、ある意味「異世界転生」作品に通じるものがあるだろう。だが、それらの作品に登場する多くのキャラはチート能力を持たない普通の人であるため、極限状態に陥った行動が読者に強烈な恐怖体験を与えてしまうことも少なくはない。

 そこで今回、多くの読者が震えながら読んだであろう恐ろしい世界を描いた「世紀末的」漫画のトラウマエピソードをいくつか振り返ってみたい。

■想像を絶する世界で戦う子どもたち

 子どもたちの生き残りをかけた壮絶な物語が50年前に誕生していた。1972年から『週刊少年サンデー』に連載されていた楳図かずお氏の『漂流教室』は、多くの「トラウマ」を読者に与えた近未来SFパニックホラーだ。

 小学6年生の高松翔たちは授業中に突然激しい地震に襲われ、気付くと学校の外は岩と砂の荒れ果てた「未来の世界」に変貌していた。当然子どもたちはパニックになるが、教師たちは錯乱した挙げ句に自殺や虐殺などして全員死んでしまう。

 残された子どもは互いに生き残るため戦うようになるが、例えば手製の石斧で襲いかかる相手に対し、主人公の翔は竹やりで突き刺すなど容赦がない。ここまででも十分な手に汗握る展開だが、まだ物語の序盤だというのだから恐ろしい。

 そんな本作で筆者がもっとも恐ろしく感じたエピソードが「盲腸手術」だ。

 盲腸で苦しむ翔を救うため子どもたちは「手術」を決行するも、その方法がトンデモない。医者の息子とはいえ手術未経験の小学生がカッターナイフを使って無麻酔で執刀を行う。工作カッターでお腹を切るなど考えただけでもゾワっとするし、痛みに苦悶する翔の様子があの“楳図タッチ”で描かれているので思わずページから目をそむけた記憶がある。

 さらに、人間の丸焼き、伝染病、子どもを「バリッバリッ」と食べてしまう怪虫、不気味な機械人形、裏切り、制裁、疑心暗鬼など数え上げたらきりがない。

 凄惨な状況でありながら「うちに帰るんだ!」の一念でタフであり続けた子どもとは真逆に、守ってくれるべき大人の脆さが露呈した作品でもあった。

■文明が崩壊したなか生きぬく少年

 もしも、ひとりぼっちで文明から切り離されたなら私たちは生き残れるだろうか? そんな疑問に答えてくれるのが1976年から1978年にかけて『週刊少年サンデー』で連載されていた、さいとう・たかを氏の漫画『サバイバル』だ。

 主人公・鈴木サトルは大地震により島に一人残されてしまう。生き延びて家族と再会するため、13歳の少年がさまざまな知識や技術を身につけ東京を目指す。

 サバイバルで最も必要なもののひとつに「火」が挙げられる。サトルは火を得るため授業で習った火おこしは失敗続きとなるが、機転を利かせて太陽光をカメラレンズで集め燃やしたり、不良たちが行っていたナイフを使って火花を起こすタバコの着火方法を思い出して成功する。崩壊した世界では学校の勉強ではなく、機転や悪知恵が役立つのも皮肉な話だ。

 好き嫌いのあったサトルは口に入るなら何でも「おいしい」と食べるようになり、寝床を作り狩りを成功させるまでに成長していく。過酷なサバイバル生活にハラハラしながら読んでいると、物語の終盤に差し掛かるころ筆者最大の「トラウマ」シーンが登場した。

 サトルは大量発生したセキセイインコの巣から卵や「ヒナ」を獲って食べようとする。ヒナを見ているうちに姉と可愛がっていた思い出が脳裏を横切るも、顔を背けながら手のひらのヒナをギュッと握り殺してしまうのだ。筆者もヒナを育てたことがあったので、串刺しにして焼くシーンにも思わず「うっ…」と声を漏らした。

 アキコやロバートなど人間との死別が多いが、心を交わした動物との悲しい別れも少なくはない。初期にサトルをネズミから守ったフクロウが、大勢のネズミに惨殺される場面も同作を代表するホラーシーンのひとつだ。

 同作では文明崩壊後にネズミが強者となっている。弱肉強食の世界で人間のエゴや弱さも描かれた良作である。

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