■「その方法がわからない所がゆるせん」
また彼は誰よりも強いプライドの持ち主で、自分の思考が追いつかないことが許せずそれが奇行につながるケースも。そんなシーンが描かれたのが、因縁の相手である仗助とチンチロリン勝負をしたエピソードで、仗助が明らかに何かイカサマを仕掛けていると悟った場面だ。
仗助は何にでも化けることができる宇宙人のミキタカに協力してもらい、大金を騙し取ろうと露伴にギャンブル勝負を持ちかける。チンチロリンはサイコロの出た目によって勝負を競うゲームで、サイコロに化けたミキタカを使うことで仗助は勝ちを確信していた。
だがここで仗助に都合の良い出目ばかり続くことに異変を感じた露伴。サイコロを何度も調べるが怪しいところは見当たらない。サイコロは怪しくはないが、仗助が何かをしているのは明らか……それが分からずに苛ついた露伴は、「フフフ」と笑ったかと思いきや、いきなり自らの小指にペンを突き立てて切断寸前となる。そして仗助に「きさまは何か『イカサマ』をしている…方法はわからんがなんらかの『イカサマ』をしている…ゆるせんその方法がわからない所がゆるせん」と、次の勝負でイカサマを見破り仗助の小指をもらうと宣言したのだった。
仗助も読者もいきなりの奇行に、度肝を抜かれたのは間違いない。そして立会人まで用意して次の勝負をしかけた露伴だったが、結局露伴の家が火事になり、すんでのところで勝負はお開きに。高校生を相手に大人気ないのはさておき、悲惨としか言いようがない露伴だった。
■山を買って破産寸前
露伴には豪快な金の使い方に纏わるエピソードもある。それが『岸辺露伴は動かない』に収録されている「六壁坂」での出来事。
露伴は妖怪漫画を描くために、別荘地の山をひとつ購入した。そこまでは普通にありえる話だがその後が酷い……。開発業者が露伴の山の付近にリゾートの道路を通そうとしたため、それを阻止するために周辺の山6つを買い取ったのだ。
そのためリゾート開発の話は流れてしまい、土地の価格が急落。山の値段は二束三文にしかならなくなった。つまり露伴は、自分の手で自分の首を絞めてしまったのである。
他人が自分の土地に入るのを嫌っての行動だが、それで山を6つも買うのは異常でしかない。そしてその後の露伴はというと、お気に入りの漫画やフィギュアを売り、康一の家に居候し、原稿料を前借りしないと生活できない状況に立たされた。
それでも露伴なりに収穫があり、六壁坂の妖怪に実際に出会うという貴重な体験をしている。転んでもただでは起きないのはさすがとしか言いようがない。
以上、4つのエピソードを振り返ったがいずれも自らの好奇心にしたがって取った行動で、露伴のことを知れば知るほど彼らしい行動にしか見えなくなるのが不思議。他人から見ると扱いづらく奇行にしかみえないが、それが魅力でもある。