荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)に登場する岸辺露伴は、長期に渡り多くのファンを獲得したシリーズを代表するキャラのひとりだ。2022年の年末には第3弾となる実写ドラマがNHKで放送され、2023年5月26日に映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開されることが発表された。
本編4部だけではなく、スピンオフ作品でも愛される露伴にはどんな魅力があるのか。さまざまな点が挙げられるが、特徴的なのはやはり異常とも思えるような奇抜な性格ではないだろうか。全ては良い漫画を描くための取材……漫画家の露伴は自らの探究心に動かされて奇行を繰り返しており、それによっていろんなキャラが振り回され、ドラマが生まれている。
そこで今回は、露伴がこれまでに見せたおかしな行動をいくつか振り返っていきたい。
■「味もみておこう」
露伴が初登場したのは、有名漫画家・岸辺露伴が近所に住んでいることを知った杜王町の高校生・広瀬康一と間田敏和が彼の家を訪れるという本編4部「漫画家のうちへ遊びに行こう」のエピソード。
極度の人嫌いである露伴だが、ファンを大切にする心を持っており、康一たちを仕事場へと招き入れる。すると、間田の制服に蜘蛛がくっついていたのを露伴が見つける。普通の人であれば蜘蛛を生かしたまま外へ逃がすか、ティッシュなどで包んで捨ててしまうかもしれない。しかし、露伴は違う……。彫刻刀で腹部を突き刺して内部を掻き出すと、そのまま解剖し、「味もみておこう」とペチャペチャリと舐めて味まで調べてみるのだ。
初登場時の露伴はまだ味方ではなく、謎の能力を使う怪しい人物として描かれており、その言動も奇妙極まりないものだった。露伴は「『リアリティ』のために知っておかなくてはならないのだよ」と話していたが、康一たちはおろか読者にも相当のインパクトを与える初登場シーンだった。
■「実にスゴイ体験をさせてもらったよ…うれしいなあ~」
このように漫画のためにすべてを捧げる岸辺露伴。彼が漫画のためなら命までも賭けられることが分かるシーンがある。それが康一の救出のためにやってきた主人公・東方仗助との対決後の一幕だ。
露伴のスタンド「ヘブンズ・ドアー」は漫画原稿を見せることで発動する。見た人物を本に変えることで記憶や体験を読み取ることができ、また本に文字を書き込むことで相手の行動を自由に操ることができるという非常にやっかいなスタンドだ。
仗助は能力を発動させないように目をつぶって避けていたが、ここで相手の目を開けさせたい露伴は、仗助が最も嫌がる「リーゼント」を馬鹿にする言葉を口にした。だがこれがまったくの逆効果に。露伴の思惑にハマって目を見開いた仗助だったが、プッツンして我を忘れてしまい周りが何も見えていない状態になってしまう。そしてそのまま、逆上した仗助にドララララッシュを食らい、部屋をメチャクチャに破壊しながらボコボコに吹き飛ばされてしまう。
だがこれでも折れないのが露伴というキャラ。全身骨折していてもおかしくない状態にもかかわらず、あろうことか受けたダメージを漫画のネタにするためメモとスケッチをしていた。「実にスゴイ体験をさせてもらったよ…うれしいなあ~」と話しながらペンを動かす姿はどう見ても異常。どこまで漫画に命を賭けているんだ、と呆れてしまう。