さまざまな“ひみつ道具”で、我々を楽しませてくれる『ドラえもん』(小学館)。藤子・F・不二雄さんが手がける本作は、22世紀の未来からやってきたネコ型ロボット・ドラえもんが、心優しくも怠け者の野比のび太の未来を変えるため奮闘する物語。
作中には「タケコプター」や「どこでもドア」など便利で魅力的な“ひみつ道具”が登場するのだが、なかには自身の欲望のままに“ないものねだり”をした結果、窮地に陥ってしまったキャラもいた。今回はそんなキャラたちのエピソードを紹介していこう。
■身長をコンプレックスに思い…「だるまおとしハンマー」でお尻が行方不明になるスネ夫
まずは、コミックス第32巻「スネ夫のおしりがゆくえ不明」から。お金持ちでルックスも良いと自負しているスネ夫だが、実は身長が低いのがコンプレックスだった。
悩むスネ夫の前に、木の上にボールがひっかかり困っているしずかが現れる。しかし、当然スネ夫の背では届かない。そこへ通りかかったドラえもんが「だるまおとしハンマー」を取り出して木を次々と弾き飛ばし、ボールを取ってあげた。
これは、物体の一部を“だるまおとし”のように弾き飛ばし、そのぶん縮ませることができるという“ひみつ道具”。切り出した一部は、本体に触れさせるともとに戻すことができる。
一件落着かのように思えたが、スネ夫はこの道具をドラえもんから奪い、その足でジャイアンのところへ行き、彼の体をいきなり弾き飛ばした。
一気に背が小さくなったジャイアンに対して「おまえチビだな」と、常々やられているようにバカにし、二度といじめないと約束させ満足したスネ夫だったが、もとに戻った彼にすかさず「だるまおとしハンマー」を奪われ、お尻の部分を弾き飛ばされてしまう。
しかし、彼の不幸はここで終わらない。弾き飛ばされたお尻はどこかへ飛んでいき、行方不明になってしまうのだ……。
結局ドラえもんの力を借り、お尻を見つける手段として“ひみつ道具”の「音楽いも」を食べておならでメロディを奏でるという恥ずかしい目に遭ったところで物語は締められていた。
身長を欲しがり他人を苦しめた代償は大きく、結果的にお尻を見失うという窮地に陥ったスネ夫。物語の冒頭で、彼は「どうしたら身長が高くなるかしら」とママに相談していたが、「ごはんをうんとたべてスポーツをするざます」の言葉を信じて取り組み始めたらこんなことにはならなかっただろうに。将来、彼の身長がぐんと伸びることを祈りたい……。
■お金の代わりに身長が縮む…!?「デビルカード」で消滅の危機に晒されたのび太
コミックス第22巻で登場した「デビルカード」によって窮地に陥ったのはのび太だ。
ドラえもんが持っていたひみつ道具で悪魔を呼び出してしまったのび太は、その悪魔から「デビルカード」を差し出される。このカードは一振りすると300円が手に入るという夢のような代物だったが、その代償として身長が1ミリ縮んでしまう。言葉巧みに誘導する悪魔の口車に乗せられ、彼は「デビルカード」を受け取ってしまった。
不運が重なり、自分だけではなく家族や友達にまでお金を使われてしまったのび太は、気づけば40万円も使ってしまっていた。しかし、実はこの「デビルカード」、自分の身長以上にお金を出してしまうと、所有者は消滅してしまうという恐ろしいリスクを伴うものだった。
彼を救うためにドラえもんは「ビッグライト」でのび太の身長を伸ばし、窮地を脱する。
この「デビルカード」の回は有名なエピソードだが、簡単にお金は手に入らないということを教えてくれるようなストーリーで、今も昔も子どもたちの教訓になっていると思う。
とはいえ、一刻も早く焼き捨てようというドラえもんに対し、のび太は「もったいない。ビッグライトがあるから、何べんでも使えるよ。」とまったく懲りない様子だったが……確かに、そうしたくなるのも分からなくはないかも……!?