■プロ根性でパイロットを魅了し続けた歌姫

 メカ、歌、恋愛の3本柱で知られる『マクロスシリーズ』には人気の「歌姫」が多いが、2008年のアニメ『マクロスF』のシェリル・ノームは異彩を放っていた。

 シェリルはマクロス・ギャラクシー船団出身のトップシンガーであり、人々から「銀河の妖精」とも呼ばれる本作のヒロイン。ステージではストロベリーブロンドの髪を「たてロール」に巻いているのが特徴で、同シリーズの『マクロス7』主人公・熱気バサラをリスペクトしてか「あたしの歌を聴けーっ!」や「こんなサービスめったにしないんだからね」などの台詞も有名。性格は自信家を裏付ける「プロ根性」の持ち主で、迷惑をかけた張本人こと主人公・早乙女アルトも「……すごいな、あんた」と驚くほどだった。

 そんなシェリルはもう一人のヒロインであるランカ・リーの芸能界入りを後押しするが、アイドルとしてランカが人気を博したことで焦りを覚える。自信家で高飛車で、面倒見の良いお姉さんキャラを見せながら、実は自分と真逆なランカにコンプレックスにも似た感情を抱いていたのだ。シュリルファンの多くはこの「ギャップ萌え」に陥ったのではないだろうか。

 また「たてロール」ではあるものの、シェリルは決して恵まれた生い立ちでない。それにも関わらず、血のにじむような努力でトップシンガーとしての地位を掴んだ。マクロスヒロインとしてはもちろん、たてロールキャラとしても異例づくしの彼女だったからこそ、今なお多くのファンから「歌姫」として愛され続けていのだろう。

 以上3人を振り返ったが、筆者の私見としては「たてロール」=「意地悪なお嬢様」イメージを広めたキャラとして、1970年代に大ヒットした『キャンディ キャンディ』のイライザ・ラガンの影響が大きいのではないかと考えている。だが、今回取り上げた彼女らは日々懸命に生きており、主人公たちに「意地悪」などしている暇などはない。むしろ主人公を引っ張っていく「頼りになるお姉さん」キャラなのではないか。

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