■『カイジ』スピンオフは、まさかのグルメ漫画

 福本伸行氏の大ヒット漫画『カイジ』(講談社)のスピンオフ作品が、原作:萩原天晴氏、漫画:上原求氏、新井和也氏による『1日外出録ハンチョウ』(講談社)。同作の主人公は『カイジ』3章「欲望の沼」編に登場した大槻班長で、彼は帝愛グループの地下労働施設で言葉巧みにカイジからペリカ(地下での独自貨幣)を巻き上げようとした狡猾な男だ。

 作中の大槻は40代後半のアラフィフで、『1日外出録ハンチョウ』の中でも地下労働施設で班長をしている。あいかわらず労働者に物品を販売したり、チンチロリンの賭場を開いたりしてペリカを荒稼ぎ。そして50万ペリカを支払えば1日だけ外出する権利が得られるのだが、大槻班長はこの権利を使ってたびたび地上に出て、グルメの名店を訪れるというストーリーだ。

『カイジ』では悪どい人物として描かれた大槻班長だが、『ハンチョウ』ではコミカルな食通キャラに。大槻の側近や、監視役の黒服とのやりとりもおもしろく、どこか憎めないキャラになっている。原作の『カイジ』が好きだった人なら思わずニヤリとする小ネタが満載で、ささやかな人情ばなしも散りばめられた秀逸なグルメである。

 ちなみに『カイジ』の実写映画で大槻班長役を演じていたのは俳優の松尾スズキ。もし実写ドラマ化するとしたら、そのままのキャストで見たい作品だ。

■舞台が斬新すぎるグルメ漫画

 魚乃目三太氏という漫画家をご存知だろうか。NHKでドラマ化された『戦争めし』の作者であり、昨年放送された『アメトーーク!』の「グルメ漫画サミット」という企画で、サンドウィッチマン伊達みきおや、GAGの福井俊太郎も大絶賛した漫画家だ。

 そんなグルメ漫画の巨匠の最新作が『はらぺこ銀河』(秋田書店)。この作品のユニークなところは、近未来の宇宙貨物船のおじさん乗組員が主人公という点にある。無重力下でラーメンやカレーといった腹ペコグルメに挑戦する展開に驚かされることは間違いない。

 空腹のおじさんが宇宙船内で悪戦苦闘しながら調理し、苦労の末に念願の料理を口にしたときの表情は一見の価値あり。コミックス第1巻は3月刊行予定なので、発売されたらぜひ新感覚のグルメ漫画を堪能してほしい。

 今回紹介した3作品はグルメをテーマにしながら、それぞれ一風変わった設定や要素が盛りこまれているのが興味深い。それにアラフィフ主人公たちが三者三様、人間的な魅力にあふれているのも見逃せないポイント。いずれもグルメ漫画に興味がない人も楽しめる人間ドラマが描かれているので、読んでみて損はないはずだ。

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