原作・久住昌之氏、作画・谷口ジロー氏による人気グルメ漫画『孤独のグルメ』(扶桑社)は、2022年にはテレビドラマのシーズン10が放送され、年末恒例の「大晦日スペシャル」も好評だった。
かつてグルメ漫画といえばアツい料理対決モノが定番だったが、最近は料理をおいしそうに食す作品や、料理をテーマにした人間ドラマを描いた作品の躍進が目立つ。ドラマ化される作品も大人向けのモノが多く、主人公の年齢が高まったことで視聴者層の共感が得られやすいことも人気の要因なのかもしれない。
『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎は50代くらいの中年男性、おなじく実写ドラマ化されている、よしながふみ氏の人気漫画『きのう何食べた?』(講談社)の主人公、シロさんとケンジも原作では50代に突入した。そこで今回は「アラフィフが主人公の一風変わった設定のグルメ漫画」にスポットを当て、今後実写ドラマ化を期待したいオススメ作品を紹介していこう。
■形見分けでもらった壺に入っていたものは
まず最初に紹介したいのは、いのうえさきこ氏の『どうぞごじゆうに 〜クミコの発酵暮らし〜』(秋田書店)。主人公のクミコはお菓子メーカーの総務部に勤める、まもなく50代を迎える独身女性。ある日、遠縁の親戚から「常滑焼の壺」を形見分けとして譲り受けたところから物語は始まる。
どんな高価な壺かと思いきや、中に詰まっていたのは年季の入った“ぬか床”。この奇妙な出会いをきっかけに、クミコとぬか床の“ぬか子”の共同生活がスタートするという内容だ。
ぬか漬けづくりに挑戦しながらも、物語はクミコの日常を中心に進んでいく。仕事上の悩み、更年期の悩みといった等身大の悩みを抱えながら、ぬか漬け料理を口にして幸せを感じるクミコの姿にほっこりとさせられる。
女性漫画誌『月刊フォアミセス』(秋田書店)に連載されている作品だが、デフォルメされた愛らしい絵柄は男性読者にもとっつきやすい。50代“おひとりさま”と“ぬか漬け”を取り巻く、優しい日常に癒されたい方は、コミックス第1巻が1月16日発売なので一読してみてはいかがだろうか。