『影武者徳川家康』や『センゴク』にも…徳川家康は“天下人”のイメージとは違った!? 江戸時代を作った偉人の“意外な人物像”を描いた漫画3選の画像
トクマコミックス『影武者徳川家康』第 1巻(徳間書店)

 2023年の『NHK大河ドラマ』の主人公は「徳川家康」だ。言わずと知れた戦国時代の天下人で、江戸幕府の創設者でもある。しかし、織田信長や豊臣秀吉とは違って、ゲームや漫画でもあまりメインの主役になることが少ないので、どちらかというと脇役に徹している印象が強い。

 筆者も家康の人物像は、どっしりと構えて信長・秀吉政権の中でじっと我慢したというイメージが強い。だが、そんな家康のイメージを覆した漫画3選を紹介していこう。

■イケメンの家康…実は影武者だった?『影武者徳川家康』

 まずは、原作:隆慶一郎氏、脚本・會川昇氏(第4巻まで担当)、作画:原哲夫氏による『影武者徳川家康』(集英社)から。『静岡新聞』で1986年から1988年にかけて連載された隆氏の時代小説をもとに原氏によって漫画化され、1994年から『週刊少年ジャンプ』で連載された作品だ。

 タイトルから想像できるように、“実は家康が影武者だった”という仰天エピソードを軸にして描かれている。

 主人公・世良田二郎三郎元信は徳川家康と瓜二つの顔(イケメン)をしているが、容姿だけでなく思考までも似ており、その才能は家康本人も認めているほどだった。

 家康は関ヶ原の戦いで島左近配下の甲斐の六郎によって独特の癖を見破られ、わずかな隙をつかれて暗殺されてしまう。ここから家康陣営の士気がガタ落ちするかと思いきや、影武者の二郎三郎が奮起を促して徳川軍を立て直し、勝利へと導いていく。

 本作では原氏らしい筋肉質のイケメン家康がカッコよく描かれていたが、前作『花の慶次』の家康は腹が出過ぎだった……まあ、実際の家康はおそらく後者だっただろう。

 その後のストーリーで、二郎三郎はそのまま徳川が安泰するまで影武者を貫くが、当然ながら事情を知る周囲との軋轢を生むこととなる。

 少ない味方のなか影武者として生きるのは孤独なものの、家康の側室であるお梶の方をはじめ周囲の手助けもあり、なんとか乗り切っていく。また二郎三郎は家康の意を継ごうとも、戦国大名として君臨していた彼のように、優しい性格ゆえなかなか非情になることができない。

 本作では、一番の味方になるはずの秀忠の恐ろしさや、悲運としかいいようのない秀頼との差が面白かった。

 両者は、家康と秀吉の後継者だ。先に天下を取っている秀吉の愛息である秀頼は多くの作品で臆病な一面があるように描かれているが、この作品では頭脳明晰で優しい人物として登場し、思わず忠誠を尽くしたくなる。

 その一方で、秀忠はとにかく目が怖い。どっちに仕えるかと聞かれたら、やはり秀頼だろう。あ、でも母の淀殿はもっと怖いかも……。

■仙石権兵衛秀久も憧れた! 信長に怯えながら強大に成長していく『センゴク』シリーズ

 宮下英樹氏による『センゴク』シリーズ(講談社)に登場する家康は、人間味あふれる人物として描かれている。

 主人公・仙石権兵衛秀久は秀吉配下の武将で、家康とも親交がある。家康は幼少期の人質期間が長かったせいもあってか、臆病な面を奮い立たせるような一面も見られた。

 仙石が明るい性格なので家康とは相性が良く、三方ヶ原の戦いからともに敗走した際の「ワシももらしたぞっ」はもはや名言だ。

 家康は博打好きでもあり、桶狭間の戦いのあとで今川か織田を選ぶ際、信長に張ったものの、それでも彼のことが怖いと思っている節があった。臆病な面を隠しながら度胸を前面に出し、信長の機嫌を損ねないように必死となる姿が人間味にあふれている。

 だが、『センゴク』シリーズでは、そんな家康が徐々に成長していくのも面白いところだった。主人公・仙石や主君の秀吉も同じように急激に成長を遂げるのだが、この両者は冷静ながらも落ち着かない性格で実は似たもの同士。かたや家康は当初は臆病だったものの、信長亡き後は大大名となって至極冷静な重鎮ぶりを見せる。その風貌は秀吉に勝り、物語の最大のライバルとして君臨していた。

 筆者的にはやはり、「もらしたぞっ」あたりの家康が好きだったな……。

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