■ヒロインを支え続けていた『僕等がいた』竹内匡史

 最後に、小畑友紀氏の『僕等がいた』(小学館)から、竹内匡史を紹介しよう。

 竹内は、ヒロイン・高橋七美の恋人・矢野元晴の親友として登場する。矢野が七美と恋人同士になるのを間近で見ていた竹内は、破天荒な矢野に振り回される七美の相談相手としてかかわっていくうちに、彼女に惹かれてしまう。

 やがて矢野は七美の前から姿を消し、消息不明に……。前に進もうとする七美をそばで支え続けた竹内の思いは実り、晴れて恋人同士になるのだが、どこか矢野を忘れることができないままでいる七美。そんな彼女の気持ちに薄々気づいていたものの、竹内は意を決して彼女にプロポーズをする。

 結局、七美は彼の気持ちに応えることができず2人は別れを選ぶのだが、一方で矢野は竹内の思いを知っていたため、遠慮して七美へ思いを告げられずにいた。

 肝心なところで踏み出さない矢野を見て、自分が七美のために用意していた婚約指輪をこっそりと彼の部屋へ置き、背中を押すというファインプレーを見せる竹内。

 涙ながらに電話で矢野へ言った「おまえと高橋はオレの犠牲の上に成り立っている」「忘れるな オレがお前に何をやったか 友情をムダにすんな」というセリフからも、彼の葛藤が読み取れるだろう。

 自分を犠牲にしてでも幸せを願いたい友人がいるというのは、ある意味幸福なことなのかもしれないが、彼は結果的に友人のために身を引くという苦渋の決断をした。彼の思いが少しは報われてほしかったと思ってしまうほど、竹内が不憫でならないのは筆者だけではないはずだ。

 

 今回紹介した3名の男たちは、友達思いであると同時に、ヒロインをそばで支え続ける優しさを持っている。

 ヒロインが最終的に選ぶ男たちは、どこか危なっかしさや刺激的な魅力があることが多いが、今回紹介した3名のように寛容で安心感のある男性が、現実的には好まれるのではないかと思う。筆者は切実に、彼らの未来に幸せがあることを願っている。

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