『スタジオジブリ』といえば、昨年11月1日にオープンした『ジブリパーク』(愛知県長久手市)が記憶に新しく、日本が誇る世界で愛されているカルチャーの1つでもある。
ジブリ作品を見て育ったという人も多く、大人から子どもまで幅広い世代から支持されているのは間違いないだろう。
そんなジブリ作品だが、主要キャラについて釈然としない疑問や謎を感じたことはないだろうか。そこで今回は「なぜそんな行動を取るの?」という素朴な疑問をはじめ、キャラ設定に対する謎などさまざまな例を挙げながら考察してみようと思う。
■『もののけ姫』のアシタカがサンに“玉の小刀”を渡したのはなぜ?
ジブリ作品における主要キャラの謎行動として有名なのが、『もののけ姫』(1997年公開)に登場するアシタカの行動だ。
アシタカはタタリ神から呪いを受けたために生まれ育った村を追われることになったのだが、旅立ちの際、彼の許嫁・カヤから「いつもいつも カヤは兄さまを思っています」と並々ならぬ決意のもと、“玉の小刀”をお守りとして手渡されている。しかしアシタカは、のちに出会う山犬に育てられた少女・サンに、この大切な小刀を渡してしまうのだ……。
彼のこの謎行動について考察すると、アシタカにとってカヤから贈られた小刀は「身を守るお守り」だったからではないかと思う。彼はやがてシシ神を守るための戦いに身を投じていくサンへ、“お守り”として小刀を渡したのではないだろうか。
彼らが生きている世界は、一寸先は闇でいつ命を落としてもおかしくない環境だ。アシタカが戦いのなかで命を落とすかもしれないサンへ向けて、唯一渡せそうなものが“カヤの小刀”だったのかもしれない。
戦いへ向けて緊張感が高まるなか、アシタカからの贈り物を受け取り「きれい……」と呟いて大切そうに首からかけたサンの行動からも、彼の決死の贈り物は意味のあるものだったと思いたい。
■『となりのトトロ』のカンタにはネコバスが見えない?
ジブリ作品の代表格である『となりのトトロ』(1988年公開)。本作には、“子どものころにしか見えない”不思議な生き物たちが登場する。
なかでも、目にも止まらぬ速さで目的地に連れて行ってくれる「ネコバス」は人気が高いキャラクターだ。メイが迷子になったとき、サツキをメイのところまで送り届けてくれたシーンは、本作において屈指の名シーンとなっている。
しかし、ネコバスについて1つ疑問に感じることがあった。それはサツキと同い年の子どもであるカンタには、ネコバスは見えていないこと。作中では、カンタがトトロやネコバスと出会うシーンが描かれていないため、“実は見えていた”なんてこともあるかもしれないが……。
リサーチしてみると「カンタに見えてしまうと物語が膨らみすぎてしまうから」という声もあった。要は、物語の都合上必要ないから描かれていないのでは?と、感じる人もいたようだ。
筆者的には、トトロやネコバスたちは「必要な子ども」にしか見えないのではないかと推測する。まだ無邪気で幼いメイの前にはすぐに姿を現したトトロだが、サツキはトトロの住処を初めて訪れたとき、その入り口を見つけることができなかった。
このときは父・タツオも同行していたためトトロのもとへ行けなかったのかもしれないが、サツキは物語終盤、切羽詰まってトトロへ助けを求めにいくとき、「お願い、トトロのところへ通して」と祈った結果、会うことができている。
トトロやネコバスという存在はそれほど“奇跡”に近いもので、いつも会えるわけではないという意味があるように感じるこの演出。これが、彼らをより“神秘的な存在”に思わせてくれている気もする。