今、声優の津田健次郎がアツい。2020年にはNHK連続テレビ小説『エール』でナレーションを務め、2021年には第15回声優アワード主演男優賞を受賞した。さらにその活躍の場は声の仕事だけにとどまらず、同年TBSドラマ『最愛』では、吉高由里子演じる主人公をしつこく追い続ける叩き上げのベテラン刑事役を熱演。2022年には日本テレビ「ぐるナイ」の人気企画「ゴチになります!」に“VIPチャレンジャー”として参戦し、見事1位を勝ち取った。
このようにマルチな活躍が見られるのはファンにとって嬉しい限りだが、ここであらためて、アニメ好きが長年親しんできた彼の「声優」としての顔に注目したいと思う。魅力に迫るべく、これまで津田が演じてきたキャラクターについてまとめてみたので、ぜひチェックしてみてほしい。
■津田健次郎の「声優」としてのキャリアを決定づけた作品とは
多くのアニメファンに“声優・津田健次郎”の名前が浸透したのは、2000年から放送が始まった『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の海馬瀬人ではないだろうか。主人公のライバルであり準主役という位置づけも大きいが、なにより海馬の狂気を全開にした演技がすごい。腹の底から突き上げるような高笑いや、声を張った名セリフの数々は、当時ファンの間でも話題になった。
そして翌年からの『テニスの王子様』では、データを駆使したプレイスタイルで知られる乾貞治を演じている。こちらは海馬とは一転、冷静な語り口が特徴的であり、津田特有の低く落ち着いた声が際立つ役どころだ。
これらは両作とも話題性は抜群で放送期間も長期にわたっていることから、海馬と乾が津田の声優としてのキャリアを決定づけたといっても過言ではないだろう。
■『呪術廻戦』『チェンソーマン』など近年の大ヒット作にも登場
近年では、2018年から始まった『ゴールデンカムイ』の尾形百之助、2020年から『呪術廻戦』の七海建人、2022年から『チェンソーマン』の岸辺と、大ヒット作品には欠かさず登場するという人気ぶりだ。
七海と岸辺はどちらも主人公のメンター的存在であり、クールなポーカーフェイスだが実は情に厚いなど、いろいろと共通点が多い。しかし「事実に即し 己を律する」をモットーとする20代の七海は淡々としたトーンで、「好きなのは 酒と女と悪魔を殺すこと」という50代の岸辺はドスのきいた低音で……と、それぞれの特徴に合った演じ分けがされている。
また尾形は陸軍中将と妾の子であり、本妻との間に男児が生まれた父から母子ともに捨てられたという複雑な成育歴を持つ。母を慕う幼少期の息子・尾形にかまわず、去った父のことばかり考えて精神的に衰弱していった母。その思い出を語る下りでは、尾形の両親に対する歪んだ愛着や静かな狂気が透けて見え、思わず鳥肌が立つほどだった。