■「目つぶって投げれば」コミカルなフリースローシーンもまさかの伏線だった!?

 最後に紹介するのは、“終生のライバル”として切磋琢磨しながら活躍していく湘北の1年生コンビのキャラクター性が垣間見えるフリースローシーンだ。

 神奈川県予選1回戦、三浦台高校との試合で初のフリースローに挑んだ桜木。初心者ゆえ何も知らなかった彼はその場で赤木から説明を受けたものの、プレッシャーから緊張してしまう。

 1本目を打たずして失敗してしまった桜木に対し、三井寿は「リングの奥を狙え」、宮城リョータは「手前だ」、そして流川楓は「目つぶって投げれば」と、好き勝手にアドバイス。このコミカルなやりとりは、その場限りの面白い話として終わるはずだった……が、このシーンでの流川のコメントがまさかの現実となる。

 インターハイ1回戦・豊玉戦の際、南烈の肘打ちが流川の左目に直撃。腫れて完全に塞がってしまう。それでも懸命にプレイを続ける流川が獲得したフリースロー。片目で距離感をつかむことができない流川は、なんと両目を閉じて打つことにしたのだ。「体の感覚を…信じろ」と、フリースローをすんなり決めてしまうのが、本当に流川らしい。

 そして流川が両目を閉じた瞬間、「両目つぶってもはいるってのか!? シュートをナメんじゃねえぞ コラァアア!!」と野次をとばす桜木が、シュートが決まり「はうあ!!」と驚き、メラメラと嫉妬の炎を燃やすところも面白かった。これも、2人のキャラクター性が垣間見える必見の名シーンだ。

 

『SLAM DUNK』において伏線のような繋がりのあるシーンを紹介した。

 どれも有名なシーンのため、ご存じの方も多いだろう。こうした丁寧なキャラクターの成長や関係性が継続的に描かれているのが、本作の魅力の一つではないだろうか。筆者も思い出して胸が熱くなってしまった。映画が公開され、あらためて本作の魅力が取り沙汰されているこの機会に、単行本を隅々まで読み返してみてはいかがだろうか。

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