■『地獄先生ぬ〜べ〜』にも登場していた「両面宿儺」

 両面宿儺はたびたび漫画や小説の題材に使われているが、同じジャンプ作品では『地獄先生ぬ~べ~』(原作・真倉翔氏、作画・岡野剛氏)にも登場している。

 ここでは、信州の山奥に封印された、二つの顔と六本の手を持つ妖怪ということになっている。土地や容貌に違いはあるものの、手足が計八本という点や、土地の力を吸って強大になるという点では、地域に根差した「土蜘蛛」の宿儺像と一致する。

 また、ぬ~べ~が鬼の手の力を100%解放しなければ倒せなかったほどの強敵であったことから、本作でも特別な存在だったと言えよう。

 

 史実にも残る「両面宿儺」。その正体は、おそらく飛騨の有力な豪族を鬼神としてデフォルメしたものではないだろうか。いずれにせよ、両面宿儺が何かしらの作品に登場するときは、鬼退治をする英雄というよりは、鬼そのものとしての禍々しい側面が強調されることが多いようだ。かつてヤマト王権に脅威を与えた存在が、現代のフィクションにおいても畏怖の対象として語られ続けているというのは興味深い。

 現代の両面宿儺が登場する『呪術廻戦』は、今年7月からはアニメ2期の放送も決定している。その前に聖地巡礼として、1600年前に本物の宿儺が暮らした土地を巡ってみても面白いかもしれない。

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