「白髪鬼」や「七人目のミイラ」も…『金田一少年の事件簿』で金田一を苦しめた“悪魔の知能犯”3選の画像
週刊少年マガジンコミックス『金田一少年の事件簿』File2(講談社)

 ミステリー漫画の金字塔といえば、1992年から『週刊少年マガジン』(講談社)で連載が始まった、原案:天樹征丸氏、原作:金成陽三郎氏、作画:さとうふみや氏による『金田一少年の事件簿』(講談社)だろう。

 主人公・金田一一は勉強やスポーツが苦手で、とても名探偵とはいえないゲーム好きな普通の高校生。語学堪能でスポーツ抜群、博識に富んだ頭脳を持つ『名探偵コナン』の主人公・工藤新一(江戸川コナン)とは雲泥の差だ。

 それでも金田一は徹底した聞き込みと周囲の協力から、抜群の推理力で難事件を次々と解決していく。そんな彼の宿敵といえば、“地獄の傀儡師”の異名を持つ高遠遥一。だが、この天才犯罪者以外にも金田一を苦しめた人物が登場した事件がいくつかあるので、紹介していこう。

■「天草財宝伝説殺人事件」超難解な事件で金田一を苦しめた“白髪鬼”

 まずは、コミックスCase3に収録されている「天草財宝伝説殺人事件」だ。

 島原の乱で弾圧された隠れキリシタンたちの財宝が時価数億円隠されているということで、フリーライターのいつき陽介から誘われて探索に繰り出す金田一。

 とはいえ、金田一は島原の乱はおろか、天草四郎すら知らない……。おいおい、本当に高校生なのか? コナンなら「……って新一兄ちゃんが言ってたよ!」と、自ら語りだすぞ……。

 まぁとにかく、この財宝はとてつもない金額だけに、当然ながら殺人事件が起こってしまう。警戒する金田一たちをあざ笑うかのように、“白髪鬼”によって関係者が連続して惨殺されるのだ。

 不可能を可能にする心理トリック、20分の距離を一瞬でゼロにする空白補完効果、瞬時に悪魔のような知恵を使って金田一を次々と翻弄する白髪鬼。それも高遠などの助力なしに淡々とこなしていくのだから、なおさら恐ろしい。

 もちろん、この白髪鬼もわずかな隙と何気ないヒントから謎を解決した金田一に追い込まれる。ただし、金田一シリーズお馴染みといえる、犯人側のどうしようもない犯行動機、切ないエピソードが心を打つのだ。とくに子どもが関連する話だから心が痛く、心をえぐられた……。本編を見て、ぜひ確かめてほしい。

■「異人館村殺人事件」残酷な殺害方法でミステリーの王道を突き進んだ“七人目のミイラ”

「オペラ座館殺人事件」に続いて2件目、初期作品ながら超難関の事件だったのが、File2の「異人館村殺人事件」だ。

 六角形の“ダビデの星”の形をしている青森県六角村。初期だからか、珍しく金田一がダビデの解説をしていた。いつもは幼なじみの七瀬美雪や後輩の佐木の役目なのだが……。

 この六角村にはそれぞれ星形の一角に六つの館があり、中央には焼け跡の残る教会がある。そして、六つの館には、なんと遺体の一部を切り取った六体のミイラがそれぞれ存在しているのだ。

 この教会では牧師夫婦が七人の孤児(娘)を引き取っていたのだが、牧師は館の主人たちに“とある理由”で殺され、七人の娘たちは教会に閉じ込められて火を放たれてミイラとなってしまった。だが、そこは金田一シリーズ。七人目のミイラが犯人となれば、おのずと復讐の動機が見えてくるもの。

 実際、この事件は難しかった。そんなことできるの?というトリックもあるが、そこはご愛敬。なんせ館の住人たちは一癖も二癖もあるヤツばかりで、みんな犯人に見えてくる。とくに時計の館の主人である時田十三の初登場の際、ページをめくった先に出てくるアップの「どなたでしょう?」のセリフには心臓が止まりそうだった……。

 ちなみに、この犯人のエピソードも少し切ない。ただ、天才犯罪者の高遠に通じるものがあった。この2人でタッグを組まれたら、さすがの金田一も危ういかもしれない。でもお互いにプライドが高そうだから、殺し合ったりして……。

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