ガンダム作品はご存じの通り、戦争や人をテーマに物語が進行する。作品の中には、戦時下の軍人の辛さや、階級社会の厳しさを表現したものも多い。そして、階級社会となれば一握りのエリートや、優れた人物が台頭することが必ずあるものだ。今回はガンダム作品の中から、そんなエリートキャラたちの、イケ好かないのに不思議と嫌いになれない“うぬぼれキャラ”を紹介していく。
■ガルマ・ザビ…嫌いになれない“坊や”
最初に紹介するのは、『機動戦士ガンダム』よりガルマ・ザビ。ジオン公国の中枢を担うザビ家の四男であり、末っ子というエリートの血筋である。(記載する内容は『機動戦士ガンダム』の情報に準ずるため、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の情報は含まない)
第11話「イセリナ、恋のあと」では、次兄のドズル・ザビが「あやつこそ、俺さえも使いこなしてくれる将軍にもなろうと……楽しみもしておったものを」と言っていることから、将来を期待される有能な器でもあった。
しかし、シャアが言うように「坊やだからさ」が否めない部分も。ガルマは地球育ちのイセリナ・エッシェンバッハと恋愛関係にあったが、前ニューヤーク市長であるイセリナの父は、地球に軍事侵攻したザビ家の御曹司ガルマとの婚約を反対していた。
ガルマはイセリナに「いま、連邦軍の機密を手に入れるチャンスなのです。それに成功すれば父とて、私の無理を聞き入れてくれます」とホワイトベース隊を撃破し、自身の父デギン・ソド・ザビに、イセリナとの婚約を取り計らってもらおうと考えていた。ホワイトベース隊を相手に、うぬぼれた考えというほかない。シャアの言葉を借りれば、「前線でラブロマンスか。ガルマらしいよ。お坊ちゃん」である。
結果、これが仇となり、手柄を急いだガルマはシャアの裏切りを見抜けず戦死した。最期までうぬぼれエリートだったガルマ。「私がイセリナのために焦っているだと……バカな、私は冷静だ」と前髪をクルクルいじるナルシスティックなシーンや、シャアを信用し切っていたお人好しな性格など、嫌いにはなれないエリートキャラである。
■ジェリド・メサ…血気盛んな高慢エリート
次に紹介するのは、『機動戦士Zガンダム』に登場する、ジェリド・メサだ。地球連邦軍の特殊部隊ティターンズに所属するジェリドは、24歳という若さでありながら叩き上げのエリートパイロットである。
第1話「黒いガンダム」で早くもそのうぬぼれっぷりを発揮。禁止されている超低空飛行をガンダムMk-Ⅱで行い、連邦軍の軍事基地に墜落。本人も「こりゃあ、始末書じゃすまんかな」と顔面蒼白だったが、続く第2話「旅立ち」で、エマ・シーンにこのことを言及されると、「バスク大佐の言う通り、即戦力になるために……」と、うぬぼれた言い訳をしていた。
第37話「ダカールの日」では、クワトロ・バジーナの演説を阻止するために、エゥーゴやカラバと交戦。その際、「ティターンズは力だ。力があってこそ全てを制するんだ」と声高に叫びながら敵を撃破する。しかし、その流れ弾が演説を行なっていた議事堂に当たってしまい、ティターンズの非道として敵のプロパガンダ放送に利用されるという、目も当てられない結果に。
そんなジェリドだが、ライラ・ミラ・ライラやマウアー・ファラオなどに気に入られ目をかけられていた。同様に、視聴者からもどこか嫌いになれない不思議な魅力がある。傲慢で、プライドが高く、それでいて成果はあげられないが、ひたすら前向きな男……そんな彼の姿が、イケ好かないけど嫌いになれない要因なのだろう。