■ひみつ道具のおかげでのび太は改心…「配役いれかえビデオ」
コミックス23巻「ぼくよりダメなやつがきた」に登場する転校生・多目くんのエピソードでも、ひみつ道具が活躍した。
転校生の多目くんは、のび太よりテストの点数が低く、かけっこも遅い。そんな存在がいることに安心し、のび太は優越感に浸っていた。次の日、教科書を忘れた2人は揃って廊下に立たされるのだが、のび太は一緒に0点を取ったり忘れ物をする協定を結ぼうと彼に提案する。しかし、“ぼくはできればちゃんとしたい”と、多目くんに断られてムッとするのび太。
その帰り道、のび太はジャイアンに野球に参加するよう言われたが、ウソをついて断り、その代役として多目くんを押し付けた。彼のせいで負け戦になるだろうと想像して笑うのび太に対し、ドラえもんが出したのは「配役いれかえビデオ」だった。ドラえもんは多目くんに対するのび太の様子が気になって、以前から録画していたのだ。
するとそこへ映し出されたのは、のび太がスネ夫に、多目くんがのび太に入れ替わった映像だった。いつも自分が受けているイジメと同じことを多目くんにしていたと気付いたのび太は愕然とする。
たまらず多目くんのところへ行くと、彼のせいで野球に負けたとジャイアンがカンカンになっていた。そこでのび太は「多目くんをすいせんしたぼくのせきにんだ」と言い、勇気を出して庇い、代わりにボコボコに殴られる。
後日、また転校することになった多目くんが「いままで、きみほどなかよくしてくれた友だちはいなかった」と、わざわざのび太の家に来てお礼を伝えに来る。
恥ずかしさを思わず口ばしり「穴があったら入りたい」と言うのび太だったが、一歩大人になったのであろう。また、直接説教をすることなく「配役いれかえビデオ」を見せ、のび太を改心させたドラえもんの手腕も光ったエピソードだった。
ドラえもんのひみつ道具は、のび太だけでなく、ときには困っているクラスメイトも助けてくれる便利なアイテムだ。
普段はどうしようもないのび太だが、このように困っている人がいると助けずにいられない正直で素直な性格がうかがえるエピソードも多く見られる。ドラえもんがのび太のもとに来たのは、こうして困っている人や悩んでいる人の助けになってほしいというメッセージがあるのかもしれないと思った次第だ。