藤子・F・不二雄氏の『ドラえもん』は、ダメっ子ののび太を助けるために未来からやってきたドラえもんとの日々が描かれた言わずと知れた国民的作品だ。
『ドラえもん』の見どころのひとつに、四次元ポケットから出されるひみつ道具があるが、この便利な道具に救われているのは、なにものび太だけではない。クラスメイトのジャイアンやスネ夫をはじめとする主要メンバー、加えてレアキャラなクラスメイトにわたって、ひみつ道具は活躍を見せているのだ。
そこで今回は、ドラえもんがクラスメイトの悩みを解決したほっこりエピソードを紹介していこうと思う。
■大家族を笑顔に変えた!「重力ペンキ」
最初のエピソードは、コミックス5巻「重力ペンキ」より。
今年のクリスマス会を、クラスメイトのあばら谷くんの家ですることにしたのび太たち。しかし、あばら谷くんの顔は浮かない様子。なぜなら小さい家に三男三女六人の子どもと母親が暮らしており、とても人を呼べる広さではなかったからだ。
ドラえもんとのび太はどうしたら良いのかと頭を悩ませていたのだが、その一方、日曜大工をしていたパパが棚作りに失敗しているのを見て「たななんかつらなくてもいいのに」と、ドラえもんが塗った場所に重力が働くひみつ道具「重力ペンキ」を出して、物を壁に貼り付けてあげる。
そこで2人はひらめく。「重力ペンキ」を持ってあばら谷くんの家へ行き、天井や壁全体に塗りつけて部屋全体を使えるようにするのだった。そうして家族がいながら友達たちを呼んでもスペースには余裕ができ、クリスマス会は成功……というところで話は締めくくられていた。
このエピソードでは、あばら谷くん母子の会話にも感動してしまう。家族に遠慮してパーティーを断ろうとすると、母親が「お友だちとの約束は、まもらなきゃいけないよ」「たまには、お友だちをさそってきたいでしょ」と、クリスマスパーティーの間、ほかの子どもたちを連れて出かけ、家を空けようとしてくれるのだ。それに涙ぐみ「かあさん……」というあばら谷くんの姿にもジーンとしてしまう。
最後のコマで、あばら谷くん一家も含め、みんなが笑顔でクリスマスパーティーをしている姿が描かれており、なんともほっこりしてしまう素敵なエピソードだった。
■遠くにいる親子をつないだ「うつしっぱなしミラー」
コミックス22巻「うつしっぱなしミラー」では、転校生・うらなりくんの悩みをひみつ道具で解決するエピソードがある。
校庭で1人、なにかを見ながら深刻そうにする様子のうらなりくん。のび太が話しかけるも無視されてしまう。スネ夫やジャイアンも気付いていたが、“いつもすみっこにいてへんなやつ”という扱いをしていた。
実は、うらなりくんの父親は船員で海へ出ており、母親は最近入院したという。ひとりぼっちの彼がいつも見ていたのは、遠くにいる父親の写真だったのだ。
そんな彼を救ったのが、ひみつ道具の「うつしっぱなしミラー」だ。実はこれ、のび太がドラえもんのどら焼きにイタズラをして隠した際、ドラえもんが犯人探しをするために使用した道具。対象の物を指定すると、その物の動きを映し続けることができるというもので、録画機能もついているため、そのときはのび太が犯人だとドラえもんは鮮やかに見破っていた。
この「うつしっぱなしミラー」を持って、ドラえもんとのび太はどこでもドアでうらなりくんの父親のところへ行って1枚を渡し、もう1枚をうらなりくんへ渡した。これで親子はミラーを通じていつでも会うことができるようになったのだ。それ以来、うらなりくんは元気になり、みんなと打ち解けることができた……というエピソード。
のび太のイタズラから、まさかの人助けへと発展したこの話。道具は使いようだと思った次第だ。