■第2位:「すりかえ」100円

 第2位にランクインしたのは秋田文庫版8巻収録の「すりかえ」。請求額はもはや紙幣ですらなく硬貨、たったの100円である。

 息子のジュン一を愛する主婦・平林エリ子は、ある日自分が出産した産院で働いている看護婦から脅迫の電話を受ける。実は彼女は3年前、自分の産んだ子が“レテラー・ジーベ病”という難病だと知り、隙を見て別の子とこっそりすりかえていた。つまり、ジュン一は彼女の実の子ではないということだ。看護婦はその現場を目撃していたといい、1000万円もの口止め料を要求してくる。

 そんな大金を用意できなかったエリ子は、とうとう訴えられ法廷に引っ張り出されてしまう。しかしそこに、彼女の分娩手術を担当したブラック・ジャックが現れると、驚きの証言をして……という内容だ。

 ラストの着地がじつに鮮やかで、二転三転する展開も相まって読みごたえのあるエピソード。ブラック・ジャックが何に対して100円を請求したのか、ぜひその目で確かめてみてほしい。いろんな意味で「え?ほんとにその値段でいいの?」と思ってしまうことだろう。

■第1位:「がめつい同士」30円

 堂々の第1位は秋田文庫版11巻収録の「がめつい同士」で、請求額は驚きの30円。まさか(無料以外で)100円以下が出てくるとは思わなかった。

 このエピソードでブラック・ジャックは、とある一家が心中のためトラックに飛び込んだところに遭遇し、病院まで保たせるため応急の手術をした。彼は何も言わずにその場を去るが、のちに一家が運ばれた病院の人間に見つかり、ぜひお礼をしたいと言われてしまう。

 その際診療費を請求していただきたいと言われ、ブラック・ジャックが提示したのはなんと50円。言われた側が驚いていると、「高すぎるかね それじゃあまけて三十円」とさらなる値引きをしてみせた。

 ちなみに手術のシーンがあるのはこのエピソードの後半だが、前半ではブラック・ジャックが治療費を払わない患者・合羽をネチネチと追いかけるシーンが描かれており、そのギャップがまた印象的だ。この合羽とブラック・ジャックのやり取りも面白く、その点にもぜひ注目してほしい。

 

 法外な治療費を請求するのを基本としながら、ときにありえないほどの低額で手術を引き受けることもあるブラック・ジャック。その裏にはさまざまな事情があるが、彼の優しさや義理堅さ、粋な一面などが垣間見えて興味深い。

 今回紹介した以外に、無料はもちろん、逆に自分が金を払ってまで(!)おこなったオペもあるので、ぜひ本編をチェックしてみてほしい。

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