手塚治虫氏による『ブラック・ジャック』は、孤高の天才外科医ブラック・ジャックを主人公とする医療漫画。2023年に連載50周年を迎えることもあり、これを機会に読み返してみようと考えている人も多いのではないだろうか。
ブラック・ジャックはほかの医師が束になっても叶わないほどの実力を持っているが、法外な報酬を要求することでも知られている。しかし、時と場合によっては、無料や信じられないほどの低報酬で働くことも。本記事ではそのなかから無料のケースを除いたベスト3を紹介していく。
なおここでは、あくまでブラック・ジャックが手術代として請求した金額が安いものを取り上げた。そのため、ほかの人間が肩代わりして安くなった例などは除いている。
■第3位:「悲鳴」1000円
第3位は、秋田文庫版4巻収録の「悲鳴」で、請求額は1000円である。
このエピソードでは、Y高校の放送部に所属する女生徒・朝戸レイが声のかすれを訴えてブラック・ジャックのもとにやってくる。彼女は“天使の声”と形容されるほどの美しい声を持っており、放送部での活動を生きがいとしていた。声がかすれた原因は声帯ポリープによるもので、放っておいても危険はないが、レイは元通りの声を出すため切除をお願いすることにする。
ブラック・ジャックはその手術にあたって50万を請求するが、レイの付き添いで来た男子生徒が恩師・山田野先生の孫だという理由で「千円まけてやろう」と発言。そう言われた男子生徒は当初、“50万の1000円引き”と勘違いするも、ブラック・ジャックが提案したのは“50万を1000円にまける”という驚きの値下げである。これには男子生徒も「医者の料金てそんなにデタラメなんですか」と呆れてしまっていた。
このほか、ブラック・ジャックはもうひとりの恩師・本間先生の娘をタダで手術したこともあり、彼が受けた恩を決して忘れず情に厚い性格であることがうかがえる。「悲鳴」の場合、患者が直接恩人とつながりがあるわけではないことを考えると、かなりの義理堅さである。
■第3位:「気が弱いシラノ」1000円
同じく請求額1000円のエピソードが、秋田文庫版第13巻収録の「気が弱いシラノ」だ。
このエピソードの主人公・シラノはジュンという女友達に想いを寄せている。ジュンは病気で家から出ることができず、シラノはそんな彼女のもとにしょっちゅう足を運んでいた。一方でジュンが恋しているのは、いつも外から声をかけてくるイケメン・栗須。シラノは内心悔しさを感じつつ、ジュンの気持ちを何より尊重していた。
しかしそんなある日、栗須が交通事故で亡くなってしまい、シラノはジュンを悲しませまいと自分が栗須になり替わることを決意する。彼がブラック・ジャックに美容整形手術を依頼すると、5000万円と1000円のコースを提示されて……というストーリーだ。
シラノは迷わず1000円のコースを選ぶが、その選択がどんな結末にたどりつくのかは本編を読んでのお楽しみ。意気地なしのシラノをブラック・ジャックが罵倒する場面も、プチ見どころ(?)のひとつである。