■宮城リョータの人生の一部を切り取った映画
鑑賞を終えて、『THE FIRST SLAM DUNK』は、宮城の人生の物語の一部を切り取ったものなのだろうと感じた。宮城リョータという人間にとってかなりのスペースを占めるバスケを通して、彼の背負ってきたものや、目の前の試合にその全てをぶつけるような思いの強さを感じ、ここまで夢中に何かに取り組むものがあることをうらやましくも思ったりもした。
この物語は、これからも続いていく宮城の長い人生の中でも特に濃い、走馬灯にも出てきそうなワンシーン。きっとこれがバスケでなくても、私は彼の人生への向き合い方に感動しただろう。そして、桜木も流川も三井もゴリも、どの選手にとってもこの試合は彼らの人生のハイライトになるのだろう。
筆者が作中で一番心に残ったセリフは、おそらくモブキャラクターであるだろう、ベンチにいる部員の「湘北に入ってよかった」という、つい心から出た本音だった。彼の胸の高鳴りに共鳴して「私もこの映画を観られてよかった!」と叫び出したい気持ちになった。
ところで、映画を見終わった後、この山王戦は当時のアニメでは描かれず映像化されていなかったと知った。この熱い試合がこれほどのクオリティで初めて映像化されたことは、ファンにとってはいかほどの喜びだったことだろう。『スラダン』歴1日の私もその喜びを共有できて、なんだか嬉しく誇らしい気持ちになった。
原作者で本作の監督・脚本を務める井上雄彦氏のツイッターでの「私たちは、スラムダンクを昔から愛してくださってる方も、はじめて見る方も、とにかく楽しんでもらいたい」という発言に全てが集約されていると思う。バスケをしたことがあってもなくても、『スラダン』を読んだことがあってもなくても、今この瞬間に一番輝いている若者の生きざまに、是非触れてほしいと思う。観賞後は「思いがけず素晴らしいものに出会ってしまった」「まさしく“人生”だった」とドキドキした気分で帰路についた。