■映画とドラマの比較によってわかるキャラの見せ方

『ジョジョ』という一風変わった世界観を持つ作品を実写化するとなると、どういう見せ方をするか、というのは最初から最後までついて回る問題だ。今回紹介した映画『ジョジョの奇妙な冒険』とドラマ『岸辺露伴は動かない』では、見せ方という点でかなりの違いがある。

 映画では、『ジョジョ』ならではのスタンドバトルに重点を置いていた。もちろん、それこそが『ジョジョ』の最大の特徴であり、魅力であるのは間違いない。「実写でスタンドが表現されたらどうなるのか?」という誰もが考えた疑問や期待に対する答えを見事に提示してくれたと言えるだろう。

 一方ドラマでは、登場する人物の細かい心理描写を丁寧に表現している。そこから分かるのは、俳優の演技が映像作品を構成するひとつの要素として、どのように作品そのものに影響を与えるのかということである。

 俳優が繊細な心理描写を上手く表現しているドラマに対して、映画ではフルCGのスタンドバトルが中心だったこともあり、どうしても俳優の存在がそこまで際立たない。翻ってドラマではスタンドが登場せず、露伴の能力でさえより現実的に見せている。

 CGが多用される映画の良し悪しは、少なからずCG表現の出来いかんによって左右される。大スクリーンで観ることが前提の映画ではリッチな画面であることを求められるのも、CGの比重が大きくなる理由のひとつだ。逆に、テレビで観るドラマでは、予算的な問題もあるが、より地に足の付いた身近な表現であることが、多様な視聴者を引きつけることになる。両者ともに媒体の特性に沿った作品作りに徹していて、それぞれに違いはあるが、その良さもまた別のものなのだ。

『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの実写化作品、映画とドラマそれぞれの見どころを比較してみたが、その制作の方向性はかなり違うことがわかったと思う。映画では豪華なキャストとCGによるスタンドバトルが展開され、ドラマでは秀逸なストーリーを元にリアルな人間模様を丁寧に表現している。どちらが好みかは見る人によっても分かれると思うが、原作シリーズもまだまだ続いていくわけで、今後もさらなる実写化作品が生まれる可能性は大いにある。その時にはまた違ったアプローチが見られることを期待したい。

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