■多くの作品で扱われる4体の霊獣「青龍・朱雀・白虎・玄武」

「四神」とは中国の神話に登場する霊獣で、「東の青龍」、「南の朱雀」、「西の白虎」、「北の玄武」の4体がそれぞれの方角を守護する存在だ。

 そんな「四神」は『幽☆遊☆白書』『修羅の門』『爆転シュート ベイブレイド』など「少年漫画」に多く登場する名前だが、筆者が直ぐに思い浮かんだのは『ふしぎ遊戯』と『BASARA』であった。

『ふしぎ遊戯』は1992年より『少女コミック』に連載されていた渡瀬悠宇氏の作品。本の世界に迷い込んだ夕城美朱が「朱雀の巫女」となり、「青龍の巫女」である友人の本郷唯と互いの陣営同士で戦う物語。後に過去の巫女たちを描いた『玄武開伝』と『白虎仙記』が発表された。

 もう一つの少女漫画『BASARA』は1990年より『別冊少女コミック』で連載された田村由美氏の作品。文明が崩壊した日本を舞台に、圧政に苦しめられる人々を救うために「白虎の刀」をはじめとした4本の宝刀をめぐる少女・更紗の戦いと旅の物語。

 両作ともに「四神」をあつかっているが、『ふしぎ遊戯』が巫女という特別な存在への「名称」であるのに対して、『BASARA』では名付けられた刀には何の力もなく人々が力を併せるうえでの「象徴」であるのが印象的であった。

■「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」

 最後に紹介する「九字護身法」とは、「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」の九字の「呪文」と九種類の「印」で祈る道教の作法だ。『NARUTO-ナルト-』で忍術を発動させる際の印の組み方はこれをヒントに作られ、先に紹介したセーラーマーズの火野レイはアニメでは九字を唱えながら見事に印も切っている。

 そんな「九字護身法」だが、1985年から『週刊ヤングジャンプ』で連載されていた荻野真氏の『孔雀王』で練習した人も多いのではないだろうか。

 本作は密教世界を主軸に、主人公の退魔師・孔雀が闇の勢力と戦う異能力バトル漫画。「九字護身法」以外にも、「闇の大日如来」や「孔雀明王とルシフェルは同一神」など“中二”的な設定が多く盛り込まれた魅力ある作品だった。

 現在ではネットなどの普及により、惑星や星座の英語名や「四神」などが言えてもそんなに驚かれないだろう。だが、1990年前後はまだ情報が少なく、専門的な知識を披露すると他人から「どうして知ってるの?」と不思議がられたものである。

 現在では哲学などの「アルターエゴ」やビジネスでよく使われる「オルタナティブ」がアニメやゲーム用語として市民権を得ているが、次はどんな「知識」がファンの心を掴むのか楽しみだ。

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