■選ぶなら危険な男より堅実な男!?『Paradise Kiss』

 矢沢あい氏による『Paradise Kiss』(祥伝社)でも、“当て馬キャラ”が大逆転を果たしていた。

 ヒロイン・早坂紫が恋に落ちたのは、危険な香りのする男・小泉譲二(ジョージ)。当初、紫はクラスメイトの徳森浩行に密かに思いを寄せていたものの、偶然出会ったジョージに惹かれ恋人同士になる。

 一方で徳森は、「パラダイス・キス」のメンバーに出会ったことで勉学から遠のく紫を密かに心配しながら、どんどん綺麗になっていく彼女に惹かれていた。

 ときにはジョージの理想とする女性像になれないと悩む紫に対して、「誰だって自分の意志に完璧な自信なんてないんだから」と、彼女に寄り添い慰めた徳森。自分とはかけ離れた感性と意志の強さを持つジョージとの違いに苦しむ紫にとって、彼の存在は知らず知らずのうちに支えとなっていたのかもしれない。

 最終的に紫は、夢を叶えるためにパリへ行ったジョージと破局。本作のラストシーンで描かれた10年後のエピソードでは、医者となった徳森とモデルや女優として活躍している紫は婚約して結婚を控えているというハッピーエンドが描かれていた。

 ジョージと燃えるような恋をした紫だが、自由奔放で夢を追いかけ続ける彼と自分の歩む道がこの先交わることがないことも理解していた。紫が徳森とどのようにして結婚にいたったかは語られていないが、優しくて包容力のある徳森を選んだ紫の選択は堅実な判断だったと思う。  

 

 ヒロインが誰と恋を実らせるのか考えながらハラハラドキドキと楽しむことができるのは、少女漫画の醍醐味の1つ。報われてほしいと願わずにはいられない健気な“当て馬キャラ”たちを支持するファンは多く、そんな彼らが大逆転を果たす物語は少女漫画ファンの心を掴んで離さない。

  1. 1
  2. 2