福山潤
福山潤
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 小説投稿サイト「小説家になろう」で累計1億2,000万PV超えした人気小説をアニメ化した異世界コメディ『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます(略称:ろうきん8)』が、2023年1月7日より放送。本作で主人公の兄・剛史を演じる福山潤は、本作を「視聴者の“異世界リテラシー”が高まっている今ならではの作品」と語る。

■ライトな入口と地に足が着いた中身のギャップ

 『ろうきん8』の主人公は、18歳にして両親と兄を事故で失い、天涯孤独となった少女・山野光波(ミツハ/CV.長江里加)。ある日「異世界」と「こちらの世界」を“行き来”できる能力を手に入れた彼女は、安泰な老後のために二つの世界で10億+10億の合計20億円=8万枚の金貨を貯めるべく動き出す。だが、福山演じる“お兄ちゃん”は、実は物語の冒頭で事故死しているのだ。

 ©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会 ©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会
©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会

「出演が決まったときは色々と情報が錯綜していて、『お兄ちゃんはあまり出てこない』という話と『ほぼ全話出てくる』という話があり、一体どっちなんだ!?という状況だったんです(笑)。原作小説やコミカライズ版ではどう描かれているのかな?と、コミカライズ版を読んでみたんですが、1話、2話の段階でアニメ版の台本とはかなり違っていたんですね。ということは、アニメ版はかなり描き方が違うんだろうと、そこからは原作は読まずに台本に主軸を置いて取り組みました。この作品は台本や現場から得られる情報、アニメーションの演出に集中したほうがいいかなと思ったので」

 原作小説では兄の存在は初期でフェードアウトしてしまうのだが、アニメ版では「ほぼ全話に出ています」とのこと。しかし本作はタイトルからして非常に個性的な作品だが、このタイトルを聞いたときはどのように感じたのだろう。その回答には、キャリアの長い彼ならではの視点があった。

「この作品はいわゆる“異世界もの”ですが、異世界ものって入口、つまりタイトルはライトなんですよね。でも中に入ってみたら、思ったよりハードだった!ということが、結構あるじゃないですか。なので、『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』というタイトルはすごくわかりやすいけど、どういうタイプの作品なのかなと思いながら中に入ってみたら、主人公が大変地に足の着いたことをやり始めて(笑)」

 まさにその意外性こそが、本作の面白いポイント。童顔美少女による夢溢れるファンタジーと思いきや、その美少女がシビアにソロバンを弾くのだから、笑ってしまう。

©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会
©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会

■“異世界リテラシー”が高まっている今だからこそ

「今は本当にたくさんの“異世界もの”が溢れていますよね。転生したら〇〇になったとか、異世界で〇〇になるとか、異世界で〇〇な生活をするとか。そもそも昔からRPGなどでも様々な異世界ものが世にあって、観ている方々の“異世界リテラシー”が高まっているじゃないですか。これまでの異世界ものの蓄積があるから、開始1、2分で『ああ、こういう世界観だな』とわかる。アニメは小説や漫画とは違って、何かを伝えるために使える時間が限られているので、イントロダクションを省略できるというのは大きな強み、アドバンテージになるんです。その中で、異世界と行き来できるという能力しか持たない主人公が、何をするか。そこで現実的に何が必要で、何が可能なのか。というところに着眼したのが、大変面白いなと思いましたね」

©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会
©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会

 福山の「いわば『宝くじが当たったら何をする?』と発想の出発点は同じ」という解説は、多くの人が一度はしたことがあるであろう“たられば”なだけに、とても腑に落ちる。そこで「住宅ローンを一括返済!」と答える人もいれば、「世界一周旅行!」と答える人もいる。社会貢献に使う人も、FIRE目指して投資する人もいるだろう。どんな選択もありうるだけに、その人の価値観や考えが浮き彫りになる。

「ミツハが選んだ“老後のためにお金を稼ぐ”というのは、現実を生きていくという選択、現実で戦っていくという選択なので、観ている我々にとっても共感できる部分が多い。同じサバイブにしても、社会の中でどう生きていくかというところに着眼しているのが、この作品の特徴。つまり生きる上でのファイナンシャルプランじゃないですか。そのファイナンシャルプランに異世界という要素が入っているところが、大変現代的だと思いました」

 原作小説が連載開始したのは、2015年。それから7年が経ち「マネーリテラシー」などの言葉も広まった現在、本作は多くの人に親近感とリアリティを持って受け入れられるはずだ。

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